■異種族間の友情の行く末は…「シャチの詩」

 最後に紹介するのは2巻収録「シャチの詩」に登場するトリトン。といっても、彼はこれまでの友達とは違って人間ではない。彼はBJが開業したての頃、自宅兼診療所の一軒家のすぐそばにある海にやってきたシャチなのだ。

 ある日海辺でぼんやりしていたBJは、傷だらけのシャチと出会う。そこでBJが“診療所を開業していっとう最初の客”として治療をしてやると、シャチはすっかり元気に。お礼のつもりなのか真珠を持ってきて、BJに懐いてしまう。

 やがて二人(?)は仲良しになり、おしゃべりを楽しんだり一緒に泳いだりするようになった。シャチはたびたび怪我をしてきたため、BJは彼に「トリトン」という名を与えカルテまで作成する。孤独だった彼にとって、トリトンとの交流は唯一の癒しの時間だったのだろう。一緒に過ごす彼らの姿はほんとうに楽しそうで、見ているこちらまでほっこりしてしまう。

 しかしトリトンは“漁場あらし”として有名なシャチで、漁師たちに目の敵にされていた。彼の怪我は漁師たちに襲われてできたものだったのだ。BJはそんな彼に対し大海原に出るよう言うのだが、そんななか事件が起きてしまい……。

 この物語ではシャチも漁師もそれぞれが生きるために行動していただけで、誰が悪いというわけでもない。だからこそ最後の悲劇的な展開には、いろいろと考えさせられるものがあった。ちなみにアニメだと原作とは違うラストになっており、両者を見比べてみるのもまた面白い。

 

 何度読んでもジンとくるBJの友情エピソード。かつての友が残したいろいろなものが、現在のBJを形づくっているのだろうと思うと感慨深いものがある。どれも味わい深く心に響くものばかりなので、ぜひあらためて本編のほうもチェックしてみていただきたい。

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