■“地上最強の男”に隠された意外な真実…『ワンパンマン』キング
2009年よりONE氏によってウェブサイトで連載され、その後、作画を村田雄介氏が担当し、『となりのヤングジャンプ』(集英社)でリメイク版が連載されている『ワンパンマン』。本作にも特殊な能力を駆使して人々を守る、数々の“ヒーロー”たちが登場する。
なかでも“S級ヒーロー”として活躍し、人々から羨望の眼差しを集めているのが、通称・“地上最強の男”と呼ばれるキングだ。
キングは金髪でオールバックのヘアスタイルと鋭い眼光、左目の傷跡が特徴的な男性で、寡黙な性格から非常に口数は少ない。戦闘スタイルも必殺技もいっさい不明だが、戦闘モードになると“キングエンジン”と呼ばれる凄まじい重低音が鳴り響くことから、大抵の怪人はこの音を聞き戦意喪失してしまうという。
ほかのS級ヒーローたち同様、凄まじい能力を秘めた実力者……に見えたのだが、作中で彼に対するあまりにも意外な“真実”が明らかとなる。それが、実はキング、なんの能力も持たないただの“一般人”だということ……。
過去に怪人が撃破された場面に偶然居合わせており、それを周囲が「キングが倒した」と勘違いした結果、偶然に偶然が重なって、気がつけばS級ヒーローの一人にまでなってしまったのである。
その後も噂ばかりが独り歩きし、強面と“キングエンジン”……恐怖と緊張から大きくなった“鼓動音”を聞くだけで、怪人が勝手に退散してくれていたというわけだ。
中身はゲームを愛する“オタク”気質な人物で、周囲が作り上げた“虚像”としての自分に日々苦悩するなんの変哲もない成人男性なのである。とはいえ、作中では常に強面とキャラクター性、そして“偶然”と“思い込み”を駆使し、幾度となく逆境を乗り越えていった。案外、本当に“S級ヒーロー”としての素質を兼ね備えているのかもしれない。
能力バトルが繰り広げられる漫画の世界で能力を持たない人間というのは、一見すると無力な存在だ。しかし、兼ね備えた機転や肉体のポテンシャル、ときには運を利用し、“能力者”たち顔負けの活躍を見せる姿は、また一風違った魅力があるように思う。