■あらゆる場所を“ファイトクラブ”に変える厄介者…「サバイバー」
第6部はアメリカにある架空の刑務所を舞台に、脱獄を目指す主人公・空条徐倫たちの戦いが描かれる。
作中ではシリーズ通しての宿敵・DIOすら認める、「最も弱いが手に余る」スタンドが登場する。そのスタンドこそ、刑務所の受刑者や看守を狂わせた「サバイバー」だ。
囚人の一人、グッチョの持つこのスタンドは小さな円盤状をしており、その能力は微かな“電気信号”によって人間を凶暴化させるというもの。
このスタンドの影響を受けた人間は、自身の意思とは無関係に闘争本能を刺激され、我を忘れて周囲の人間たちと“殺し合い”を始めてしまう。また、この能力の影響を受けると、相手の肉体の“長所”が輝いて見え、逆に“短所”は黒ずんで見えるようになるのだ。
作中では独房にいた囚人や看守を巻き込んだことにより大乱闘が勃発してしまい、刑務所の一角が殺し合いの場となってしまった。
一見すると強力な能力に見えるが、最大の欠点は“能力の対象を選ぶことができない”という点だろう。効果範囲内であれば敵・味方関係なく凶暴化させてしまうため、ただ場を混乱させることしかできず、下手をすれば使用者も巻き込まれてダメージを負いかねない。
加えて、スタンドの発している“電気信号”も非常に微弱なもので、地面や壁が濡れていないとそもそも効果を伝搬させることができないなど、使用するための前提条件まで存在してしまう。
作中、空条徐倫の足止めに成功したものの、使用する場所やタイミングに悩まされてしまう、どうにも厄介なスタンドだ。
パワーやスピードといったステータス面では後れを取る一方、実に癖の強い能力で活躍する数々の“スタンド”たち。弱く、不自由な力でありながら、ときに無秩序に場をかき回すその活躍っぷりは、バトル漫画というよりどこかホラーチックな不気味さすら伝わってくる。