■毎年テーマにあわせた退場セリフが用意された『プリキュア』

『セーラームーン』と同様に、2023年に放送20周年を迎え今なお人気の『プリキュア』シリーズでも、プリキュアに変身する少女たちは敵をただ倒すのではなく浄化することが多い。そのフレーズも、作品テーマにどこかリンクしたかわいらしいものが多いのだ。

『ドキドキ!プリキュア』では浄化されたジコチューは目がハート型になって「ラブ、ラブ、ラーブ!」と幸せそうに消滅していく。セリフこそ似ているが、『セーラームーン』では敵の苦しそうな顔とセリフのギャップが印象的だったが、『プリキュア』では浄化されていく敵の表情も幸せそうだ。

 このほかにも、『ハピネスチャージプリキュア!』でのサイアークは「ゴクラ~ク」、『Go! プリンセスプリキュア』のゼツボーグは「ドリーミング」、『デリシャスパーティ・プリキュア』のウバウゾーは「オナカイッパイ」、現在放送中の『ひろがるスカイ! プリキュア』のランボーグは「スミキッター」と言って浄化されていく。どれも非常にポジティブな言葉である。

 ひとつ、面白い例がある。2018年放送の『HUGっと! プリキュア』ではオシマイダーという怪物たちは、「ヤメサセテモライマス!」と幸せそうな顔で浄化されていった。これはプリキュアの敵組織であるクライアス社がブラック会社であることを示唆しており、退職していく怪物たちが解放される様子が特徴的だった。

 前向きな言葉にあふれている敵たちの浄化セリフの数々。それは彼らが悪というしがらみから解放された証拠なのだろう。敵を「倒す」概念から「救う」概念へと変えていった変身少女アニメは、今やほかにはない魅力を確立している。

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