なぜポジティブな捨てセリフで死ぬ? 『セーラームーン』『プリキュア』変身美少女アニメが敵を“倒す”ではなく“救う”ワケ の画像
(C)武内直子・PNP/劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」製作委員会

 アニメで主人公やヒーローが敵を倒す場面で、敵が毎回決まった行動をとることがある。古くは1977年から放送されていた『​​タイムボカンシリーズ ヤッターマン』のドロンボー一味がその例だろう。ドロンボーメカはほぼ毎回最後には爆発し、ドクロ雲を残すという「お約束」で視聴者に愛された。

 またこれと同様に、やっつけられた敵が毎回同じ捨てセリフを吐いて去っていくことがある。

『それいけ! アンパンマン』のばいきんまんがアンパンマンに吹き飛ばされながら言う「バイバイキーン!」や、『ポケットモンスター』のロケット団の「やな感じー!」などはメイン視聴者層である子どもたちにとっても耳なじみよく、彼らの代名詞のようなセリフとなっている。

 ところで、先述した子ども向けアニメや少年向けアニメが敵を倒して「退治する」というストーリーフォーマットなのに対して、少女向け作品である、いわゆる変身ヒロインもの(少女が変身して悪と戦う作品)は、敵をただ倒すのではなく「浄化して悪の心を取り除
く」というフォーマットがとられることが多い。

 例えば1995年放送の『愛天使伝説ウェディングピーチ』では、主人公の花咲ももこが変身するウェディングピーチが必殺技「ブライダル・フラッシュ」で大きな赤いハート形のビームを発射し、悪魔に浴びせて浄化していた。

 そして、こうした敵を浄化して消滅させる作品では、敵がやられたとき(浄化されたとき)の最後のセリフが、不思議とポジティブな意味を持つフレーズであることが多い。

■『セーラームーン』の敵たちによる捨てセリフ

 1992年から5シリーズにわたって放送された『美少女戦士セーラームーン』がその系譜の先駆者だろう。

「無印」と呼ばれる第1作目では、「ムーン・ヒーリング・エスカレーション」で浄化された敵は両手を掲げて「リフレーッシュ!」と叫んで人間に戻った。続く2作目『R』の前半では、敵であるカーディアンは「クレンジング!」と叫んで浄化されていく。どちらもスッキリしたイメージのある言葉だ。

 続いて『S』の前半では、敵の断末魔は「ラブリー!」というもので、セーラームーンがパワーアップした後半では「ラブラブリー!」となる。ここまで来るとなんだかかわいらしい。恐ろしい顔の敵がこれらの言葉を叫んで消えていく様子は、大人になってあらためて見てみると絵とセリフのギャップにクスッとなってしまう。

 さて、4作目『SuperS』では敵がサーカスをイメージしたものであることもあって、浄化時のセリフは「ステージアウト!」という少しスタイリッシュなものになる。そして最終作『セーラースターズ』では「ビューティフォー!」と言って浄化されていく。

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