1975年から放送開始したアニメ『まんが日本昔ばなし』は、日本各地に伝わる昔話を映像化したもので、市原悦子と常田富士男による語りが印象的だった。
放送された話の中にはどこか物悲しい雰囲気のものや、妖怪にまつわる話などが多く、幼いながらに「なんとなく怖い」という感情を覚えた視聴者は多かっただろう。
中でも当時の子どもたちを怖がらせたのは「山んば」が出てくる話ではないか。優しそうなおばあさんが実は山んばだったというパターンが多く、その変わりようで多くの子どもたちを震え上がらせた。
大人になった今見返すと、「怖い」以外の感情や気づきがある『まんが日本昔ばなし』だが、今回は子ども時代にとにかく怖かった「山んば」のエピソードを紹介したい。
まずは1977年に放送された「山んばの嫁さん」。これは山んばに押し切られて結婚した男が、大食漢の山んばに困って離婚を持ちかけるという話。山んばはこしき(米などを蒸すための土器)を買ってくれたら応じるということで男はその通りにするが、山んばはその中に男を入れ里に帰るとみんなで男を食べようとする。結局男はうまく逃げたものの、山んばに追いかけられて……という話だ。
このほかにも1976年の「牛方と山んば」は、山んばが牛方の魚や牛を襲い、さらに牛方を食べようと追いかけてくる話。
山んばの家に逃げ込んだ牛方は、機転をきかせて釜の中に山んばを入れ、その上に大きな石臼を置いてかまどに火を起こし山んばを退治する。
この話は有名で『まんが日本昔ばなし』以外にも、牛方が池の近くの木に登って逃げ、山んばは池に映った姿を牛方と勘違いして池に飛び込んだり、かまどで山んばを退治した後に牛方が中を開けると、山んばではなく大きなクモが死んでいたりとさまざまなパターンがあるようだ。
ここまで見てみると、山んばにはなぜか「大食い」で「足が速い」というという共通点がある。
一方、こんな話もある。1988年放送の「琴塚」は、村人にお膳やお椀を貸してくれる絶対に顔を見せない山んばの話だ。源太という若者がお椀を返すタイミングで無理やり彼女の顔を見ると、すさまじい地鳴りが響き、山んばのいた穴の中はもぬけの殻になった。以降、お膳やお椀を貸してくれる山んばは二度と現れなかったという。自業自得という言葉がぴったりのストーリーだ。