■中にはほっこり「山んば」も

 山んばに関するストーリーには怖いものが多いが、意外にもほっこりする展開もある。

 1976年に放送された「ちょうふく山の山んば」などはその代表で、これはあるお婆さんが21日間山んばの面倒を見たお礼に、山んばから錦の反物をもらうという話。この反物はいくら使ってもなくなることがなかったという。

 ほかにも、1983年放送の「山姥と西の長者」は、安右衛門(やすえもん)という百姓が山んばの出産を手伝い面倒を見たことで、そのお礼に大金持ちになったという心あたたまるいい話だ。山んばには前述した、村人を追いかけてくる恐ろしい山んばと、親切にすることで福の神のような行動をとる山んばとがいるようだ。

 なおイラストレーターのナガノ氏がSNSで連載し、アニメ化もされて話題となっている『ちいかわ』にも山んばは登場する。

 それはちいかわ・ハチワレ・うさぎの3匹が森でマロングラッセをとっていたときのこと。謎のワナにかかった3匹を助けてくれたのが優しそうな老婆だった。

 3匹は老婆の家に招待されもてなしを受けるが、翌朝、実はこの老婆は山んばだったということが判明する。偶然か意図的かはわからないが、うさぎが朝食の味噌汁に入れておいた毒キノコのおかげでなんとか難を逃れるというストーリーだ。

 かわいらしい絵柄の中にダークなストーリーが人気の『ちいかわ』だけに、読者もちいかわたちがいつ山んばに襲われるのかとハラハラしながら展開を見守っていたようだ。このストーリーもまた、優しそうなおばあさんが実は恐ろしい山んばだったという典型的なパターンだった。

 山んばという言葉自体が大人になってからはあまり耳にする機会のないものだが、今も昔も、山んばは恐ろしいものというイメージが根強い。

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