■物語に深く関わるベガパンクの研究成果

 ベガパンクはその姿が明かされないまま、物語のいたるところで彼の研究が関わっていることが明らかとなっている。

 たとえばシャボンディ諸島や頂上戦争でルフィや白ひげ海賊団を苦しめた、くまの容姿をした人間兵器”パシフィスタ“を開発したのもベガパンクだ。さらにカイドウが食べた“ウオウオの実”のコピー品を誕生させたことも、ワノ国編のクライマックスに大きく影響した事柄となった。

 また、最新刊の第105巻で麦わらの一味が辿り着いた未来島エッグヘッドでは、“無人調理器”や”土暖房システム“を発展させた“島エアコン”、空島で見られた“島雲”や“海雲”などさまざまなものを開発していることがわかっている。

 とくに王下七武海の姿をした新型のパシフィスタ”セラフィム“の登場は、今後の物語にさらなる影響を与えることが予想される。その開発方法や戦闘能力などの情報が白日の下にさらされれば、ついに“悪魔の実”の正体について語られる日も近いのではないだろうか。

■ついに姿を現した6人のベガパンク

 そして、最新刊の第105巻では彼について新たな大きな動きがあった。今まで名前でしか登場しなかったベガパンクが、ついに姿を現したのだ。45巻ではじめてその名が語られてから実に16年の歳月を経て、意外な形でその姿があらわとなった。

 未来島エッグヘッドに上陸した麦わらの一味の前に姿を現したのは、なんと6人のベガパンク。本体のベガパンクがあまりにも忙しいために、自身と脳を共有した「正」「悪」「想」「知」「暴」「欲」を冠する、6人のベガパンクを生み出したのだ。

 つまり厳密に言えば、現時点では未だベガパンク本人の姿は明らかとなっていないのだが、この6人の登場を機に物語が一気に加速することは間違いないだろう。現に「正」が、900年前に存在していた高い文明を持つとある「王国」について言及しはじめている。今まで謎であった“空白の100年”に関する情報が明らかになれば、『ONE PIECE』の世界の謎がついに解き明かされるのかもしれない。

 少なくともベガパンクたちが登場したエッグヘッド編が、物語の分岐点となることが予想できる。

 

 はじめてその名が明かされてから、16年もの間、謎に包まれていたベガパンク。その正体がついに明らかになったことで『ONE PIECE』が完結に向けて動いていることがなんとなく感じられ、少し切なくもある。しかしそんな想いを上回る勢いで、ジャンプ本誌では怒涛の展開が繰り広げられているのだが……。

 すべてを知りたい気持ちと、終わりに向けて進む物語を読みたくないという矛盾した気持ちをはらみながら、「最新話」のページをめくれる喜びを噛みしめていきたい。

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