漫画・アニメ史において定番の“暴力ヒロイン”は、常に一定数の人気を集めてきた。主人公のセクハラなどの悪行に対して鉄槌を下す『シティーハンター』の槇村香、『らんま1/2』の天道あかねなどは、“暴力ヒロイン”の典型であると言えるだろう。
近年はファンに好まれるヒロイン像が変化した影響か、あまり姿を見なくなってしまった暴力ヒロイン。しかしその“過剰なまでのツン”がデレる瞬間の尊さは、どれだけ時代を経ても失われないと思う。そこで今回は、近年登場した暴力ヒロインたちを3人紹介したい。
■箱入り娘の照れ隠し!? 『カッコウの許嫁』天野エリカ
吉河美希氏の『カッコウの許嫁』は、『週刊少年マガジン』(講談社)で2020年から連載中のラブコメディだ。勉強だけが取り柄のさえない高校生・海野凪は、生まれたときに別の新生児と“取り違えられた”過去を持つ。その相手はなんと、スーパーセレブのお嬢様かつインフルエンサーの天野エリカだった。
お互いの両親は、育ての子も血の繋がった実の子も可愛い。それならば、“2人が結婚したら万事解決”ということで、凪とエリカはあれよあれよという間に許嫁にされてしまう……。
エリカは第1話での初登場でいきなり、ラッキースケベに暴力で制裁を下す正統派(?)暴力ヒロインとしての一面を見せていた。このときは殴る蹴るなどの直接的な描写はなく、次のコマで、主人公の頬が痛々しいことになっている程度ではあったが……。その後も腕枕の体勢になっただけで手が出てしまったり、凪に抱きしめられそうになって照れ隠しで腹パンを決めたりと、なかなかに衝撃的なシーンが出てくる。
それ以外にも短気でわがままな言動が目立つエリカだが、実は人見知りで引っ込み思案な一面も。しかし初対面のときから素のままで接しているところを見ると、凪といる時は随分リラックスしているようだ。なのに素直になれず突っかかってしまうところが、なんとも可愛らしいヒロインである。
■女の子として見られたいのに…『トモちゃんは女の子!』トモちゃん
柳田史太氏による『トモちゃんは女の子!』は、“男よりも男らしい”女子高生・相沢智(トモちゃん)の恋愛を描いた4コマ漫画である。
トモちゃんは実家が空手の道場で、幼い頃から鍛えていたため喧嘩にめっぽう強い。おまけに父親は彼女が男に殴られ顔を腫らして帰ってくると、「まさか貴様 負けたのではあるまいな!?」などと怒声を浴びせる“教育方針(!?)”の持ち主である。これでは、彼女が男らしくなってしまうのも無理はない。
そんな彼女は幼なじみの久保田淳一郎のことが好きで、彼に“女の子”として見てもらいたいのだが、実際はお尻をはたかれるわ、胸倉を掴まれるわと、どうしても“男友達”として扱われてしまう。
語尾を女の子らしくしたら“おっさん”と言われ、髪の毛を伸ばしたら“武者修行者”と言われ……どんなに涙ぐましい努力を重ねても、全然うまくいかない。そこでしゅんとするのではなく、“だったら殴り倒してわからせる”という発想に至ってしまう脳筋なトモちゃんなので、恋の道はすれ違いばかりだ。
それでも中身はやっぱり“女の子”なトモちゃんは、面白くて可愛らしい。いつか彼女の恋が実る日はやってくるのか、それはぜひ本編をチェックして確かめていただきたい。