■数々の感動シーンを生んだ藤原さんの父親キャラたち

『Dr.STONE』の主人公・石神千空の父親(養父)である石神百夜の演技も胸を打った。石神百夜は謎の地球規模での人類石化現象前に宇宙に飛び立った宇宙飛行士のため、石化から逃れることができた「人類最後の6人」の1人だ。

 千空らは石化から3700年が経過してから目覚めたので、百夜は作中ではとっくの昔に故人となっているが、彼は自分の息子がいつか文明を復興させることを信じて、自分の子孫たちに百物語というかたちで生存の術を残したり、レコードを作って千空へメッセージを残すなど、未来へたくさんの贈り物を残してくれていた。
 
 普段はヘラヘラしていても決めるときはビシッと決めて仲間を元気づける姿が最後までカッコ良かった百夜は、血が繋がっていなくても親子の絆の強さを感じさせてくれた。レコードから肉声が息子の千空に届いたアニメ1期最終回の展開はまさに感動の嵐となった。

 このほか『青の祓魔師』の藤本獅郎や『たまこまーけっと』の北白川豆大など、どの父親役も子どもに寄り添い、積み重ねた人生の深みを感じさせる父親だった。

 もちろん藤原さんの魅力は父親役以外でも遺憾なく発揮されている。2011年版の『HUNTER×HUNTER』のレオリオや『ぼのぼの』のアライグマくん、『ケロロ軍曹』のナレーションなどではひょうひょうとした演技が印象的で、『チャーリーとチョコレート工場』のウィリー・ウォンカや『ダークナイト』のジョーカー、ロバート・ダウニー・Jr.など、洋画吹き替えの世界でも重宝される存在だった。いずれにしても、一度聞いただけでそれが藤原さんの声だとわかる唯一無二の魅力があった。

 今でも多くの人に愛される藤原さんの芝居の数々。今日は彼の声を聞いて、かっこいい大人について考えてみたくなる。

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