藤原啓治さんの父親キャラは「理想の大人の男性」だった…包容力と親しみやすさ、多くの人の心に残る活躍を振り返るの画像
アニメ『クレヨンしんちゃん きっとベスト☆冒険!ひろし&みさえ』DVDより

 声優の藤原啓治さんが2020年に亡くなってから、4月12日で3年となる。『クレヨンしんちゃん』のしんのすけの父親・野原ひろしをはじめとして、父親キャラ役を多く務めた藤原さん。藤原さんの演じる父親役は、包容力がありながらもどこか人間くさい親しみやすさがあり、まさに「理想の大人の男性」だったと評価する人は多い。今回は藤原さんが声を吹き込んだ父親役を振り返りたい。

 まずは代表作ともいえる『クレヨンしんちゃん』の野原ひろし。ひろしは平日は会社に行き日曜は家でダラダラ過ごす典型的な日本の父親キャラで、しんのすけやひまわりと接する家族団らんの様子を自身の家族との思い出に重ねた人も多いだろう。

 特に印象的なのは2001年の映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』だろう。同作は、大人たちが子どもの頃を懐かしみ幼児退行してしまった世界でしんのすけら子どもが奮闘する物語。子どもに戻ってしまったひろしがしんのすけの機転で足の臭いを嗅がされ、今までの人生を思い出して正気を取り戻すシーンは号泣シーンとして有名だ。

 物語の終盤、結婚して子を持つ人生を「つまらない人生」と言われたひろしは「俺の人生はつまらなくなんかない! 家族がいる幸せをあんたたちにもわけてあげたいくらいだぜ!」と否定する。家庭を持つという当たり前で普通な幸せの尊さを、ひろしは誰よりもわかっているのだ。

鋼の錬金術師』のマース・ヒューズも藤原さんが演じた父親キャラのひとり。彼はアメストリス軍の中佐で、メインキャラクターであるロイ・マスタング大佐の親友であり、ヒューズの死がマスタング大佐の心に大きな影を落とすこととなる。

 ヒューズは家族を溺愛する親バカかつ愛妻家で、いつも家族の写真を持ち歩いては周りに家族自慢をしていた人物。一方で頭が切れるため一連の騒動に軍が絡んでいることを直感し、それをマスタング大佐に伝えようとしたところ敵のホムンクルスに撃たれて死亡してしまう。

 ヒューズに関してもっとも泣けるのが、敵のホムンクルスが自分の妻の姿に化けたため、相手が敵であると知っていても刺せなかったところだ。その行動は彼が本当に家族を愛していたことを感じさせる。

 結果的にコミックスでは2巻から4巻というかなり短い登場となったが、ヒューズが多くの読者の心に響いた印象的な人物であることは間違いない。

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