■劇場版『名探偵コナン』の脚本作りのおもしろさ

 劇場版『名探偵コナン』に最新作を含めて6作品携わっている櫻井氏に、実写作品のときとの脚本づくりの違いを聞いてみた。

「『名探偵コナン』においては、原作の青山剛昌先生やプロデューサー陣、監督の要望を成立させるように脚本を作るのが僕の仕事なのですが、たとえばアクションシーンの描写などは監督にお任せしています。ですから、声優たちは、僕の脚本をベースに作られた“アフレコ台本”というものを見て演じている。僕自身も、完成を観て驚くことが非常に多いですね。前に僕が書いた『緋色の弾丸』を観たときも、冒頭からびっくりして。デトロイトの道端で男がハーモニカを吹く描写があるのですが、僕は書いていないんですよ(笑)。でも非常にカッコいい入り方で、驚きとともに気に入りました。
『黒鉄の魚影』は、灰原哀が黒ずくめの組織に迫られるという話に、世界中の警察が持つ防犯カメラを繋いだ最新システムを搭載した海洋施設『パシフィック・ブイ』を取り入れた物語なので、劇中には組織のメンバーや外国人エンジニアが多く登場します。僕は各キャラクターのバックボーンを考えて作ってはいるのですが、打ち合わせをするなかで尺の問題が浮上しました。海洋アクションか、『パシフィック・ブイ』のミステリ要素のどれかを削るかとなったときに、結果的にどちらも残すことに決まった。それで今回は、キャラクターのバックボーンを多少カットすることになったんです。昔よりは慣れましたが、やはりいまでも尺の予測は難しいと感じています。コナンの映画作りの大変さとおもしろさはこういうところですね」

 今後はミステリというジャンル以外の作品もどんどん執筆していきたいと意欲的な櫻井氏。

「これは常に思っていて、毎年1本は、事件もの以外のジャンルを書くと決めているんです。 まあコロナ禍でそれができなくなっちゃった時期もありましたが、経済もの、戦争もの、時代劇など、いろいろなジャンルを書き続け、それがいつか映画として成立するといいなと思っていますね」

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PROFILE
さくらい たけはる
1970年生まれ、東京都出身。1993年より東宝株式会社に入社。在職中に第一回読売テレビシナリオ大賞を受賞。退職後は脚本家に転身。ドラマ『相棒』、『科捜研の女』シリーズなど、ミステリ作品を中心に活躍。劇場版『名探偵コナン』の脚本は、今作のほか、『名探偵コナン 絶海の探偵』(2013年)、『名探偵コナン 業火の向日葵』(2015年)、『名探偵コナン 純黒の悪夢』(2016年)、『名探偵コナン ゼロの執行人』(2018年)、『名探偵コナン 緋色の弾丸』(2021年)を担当。

INFORMATION
『名探偵コナン 黒鉄の魚影』
2023年4月14日(金)全国東宝系にて公開

https://www.conan-movie.jp


原作:青山剛昌「名探偵コナン」(小学館「週刊少年サンデー」連載中)
監督:立川 譲 
脚本:櫻井武晴  
音楽:菅野祐悟 
声の出演:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、林原めぐみ ほか
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
©2023 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会 

STORY
 東京・八丈島近海に建設された、世界中の警察が持つ防犯カメラを繋ぐための海洋施設『パシフィック・ブイ』。本格稼働に向けて、ヨーロッパの警察組織・ユーロポールが管轄するネットワークと接続するため、世界各国のエンジニアが集結。そこでは顔認証システムを応用した、とある新技術のテストも進められていた―。一方、園子の招待で八丈島にホエールウォッチングに来ていたコナンたち少年探偵団。するとコナンのもとへ沖矢昴(赤井秀一)から、ユーロポールの職員がドイツでジンに殺害された、という一本の電話が。不穏に思ったコナンは『パシフィック・ブイ』の警備に向かっていた黒田兵衛たち警視庁関係者が乗る警備艇に忍び込み、施設内に潜入。すると、システム稼働に向け着々と準備が進められている施設内で、ひとりの女性エンジニアが黒ずくめの組織に誘拐される事件が発生…!さらに、彼女が持っていた、ある情報を記す USB が組織の手に渡ってしまう…。
 海中で不気味に唸るスクリュー音。そして八丈島に宿泊していた灰原のもとにも、黒い影が忍び寄り…。決して触れてはいけない玉手箱(ブラックボックス)が開かれたとき、封じ込めた過去がいま、洋上に浮かび上がるーー

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