バトル漫画にしばしば登場する、臆病な性格のためビビってしまったり理性が邪魔をしたりと、実力を出せずに苦悩するキャラ。しかし、そんな中にも「本気を出せば実は結構すごいんじゃないの?」と思えるようなキャラがいる。それは、陰で人一倍の努力をしていたり、何気ない仕草に無自覚な強さがにじみ出てしまっていたりするからだ。
だからこそ、そんなキャラたちにスイッチが入るタイミングには「ついに来た!」と興奮してしまう。それは、往々にしてそのキャラが意識を失った時に訪れる。それまで真の実力を発揮する邪魔になっていた思考が途切れ、リミッターが解除されるのだ。まるで別人のようになってしまい、相手はおろか読者までもが驚かされる。今回は、そんな“無意識状態になることで覚醒したキャラ”の名シーンを紹介していきたい。
■『鬼滅の刃』我妻善逸の霹靂一閃!
『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴氏/集英社)といえば、2月3日に公開された映画『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』も好評を博し、4月9日からはいよいよTVシリーズ第3期「刀鍛冶の里編」が放映開始と、いまだにその人気は衰えることのないメガヒット作品。
そんな『鬼滅の刃』を代表するキャラの1人が我妻善逸だ。命を賭けて鬼を倒す鬼殺隊の一員でありながら、臆病でかなり逃げ腰な善逸だが、意識を失うと別人になる。弱気な性格が意識とともに影を潜め、技のキレも最高潮に達する。そこから繰り出される雷の呼吸「霹靂一閃」のカッコよさは、善逸の普段のダメ男ぶりとのギャップがすさまじく、思わず胸が熱くなってしまう。
善逸が無意識状態で戦闘するシーンはいくつかあるが、特に圧巻なのが那田蜘蛛山での兄蜘蛛との戦いだ。毒に冒されてあとがない状況で意識を失うと、「霹靂一閃 六連」によって兄蜘蛛を一瞬で葬ってしまったのだ。
善逸が閃光となって縦横無尽に動き回り、戦況が一変して兄蜘蛛の顔が青ざめた姿には、読者も「待ってました!」と心の中で快哉を叫んだはずだ。雷の呼吸の真価、そして善逸の強さが明らかになった瞬間だったと言えるだろう。
■『新・コータローまかりとおる! 柔道編』西郷三四郎の山嵐!
『新・コータローまかりとおる! 柔道編』(蛭田達也氏/講談社)にも、無意識状態になると最強になるキャラがいる。それが、柔道部の1年生である西郷三四郎だ。西郷は、タコ足と呼ばれる地面に吸い付くような足を持ち人の何倍も努力しながらも、相手を目の前にすると緊張してしまうため実力を発揮できず、特に目立った戦績も残せていなかった。
そんな西郷の才能と実力を知らしめることになったのが、中学時代に重量級で輝かしい成績を残してきた醍醐との一戦である。醍醐は自身の強さに驕り練習を怠け、西郷を格下扱いしていた。対して西郷は、そんな醍醐を恐れ、リンチを受けた際に意識を失ってしまう。ところが、そこから覚醒した西郷は、まさかの無敵モードに突入し、次々と相手を投げ飛ばし、幻の技である「山嵐」を醍醐に食らわせる。
西郷は、無意識になることでいらぬ思考を振り払い、蓄えた力を全て出し切ることができたのだろう。しかも、100キロ以上もの体重差がある醍醐を投げ飛ばす様は「柔よく剛を制す」を体現する形にもなっていて、「柔道編」のタイトルにふさわしい展開だった。