多くの人が想像するであろう「王子さま像」といえば、白馬に跨りキラキラとした清廉潔白な存在かもしれない。ところが、ロボットアニメに登場する王子さまには、血と硝煙にまみれながら味方さえ欺く人物もいる。たとえば、『コードギアスシリーズ』の主人公ルルーシュ・ランペルージはブリタニア皇族の第11王子だが、母親の暗殺など不遇な仕打ちを受けたことで父王に復讐を誓うダークヒーローだった。
『機動戦士ガンダム』に登場するシャア・アズナブルは、ジオン共和国を樹立させたジオン・ズム・ダイクンの息子キャスパル・レム・ダイクンであり、共和国でなければいわば「王子」的存在である。そんな彼はザビ家への復讐を果たすため素顔や素性を隠し、理想のために多くの犠牲を払った人物だ。
このように、王子さまキャラがロボットに乗る場合は、かなり物騒な運命を背負うようである。そこで今回は、ロボットアニメにおける王子さまがロボットで戦う意外な理由や、その奥に見え隠れする複雑な家庭模様を見てみたいと思う。
■『ガリアン』『グレンダイザー』祖国を滅ぼされ放浪の旅に出奔していた王子さま
最初に紹介するのは、母星や母国を奪われ逃げ出した2人の王子さま。
1975年から放送された『UFOロボ グレンダイザー』は、1972年の『マジンガーZ』から続く「マジンガーシリーズ」の第3作。主人公のデュークフリードはフリード星の王子であったが、宇宙征服を目論むベガ星により故郷を滅ぼされてしまう。グレンダイザーで脱出した彼は辿り着いた地球で宇門博士の養子となり、地球人・宇門大介として静かに暮らしていた。だが、地球にもベガ星からの魔の手が迫り、デュークフリードはグレンダイザーで戦うようになる。
また、1984年から放送された『機甲界ガリアン』の主人公ジョルディ・ボーダーも、同じく敵から逃れた王子だ。ボーダー王国に世継ジョルディが誕生した日、征服王マーダルにより王が殺され城は陥落、王妃も捕らえられてしまう。ジョルディは忠臣アズベスの孫として育つが、12歳のときに自身が亡国の王子であることを知り、機甲兵ガリアンに乗り込みマーダル打倒を決意する。
異星の王子であったデュークフリードは、やさしく穏やかな性格から育ちの良さが伺われる。さらに、年若い熱血ヒーローが多い時代に20歳前後で落ち着きがあり、母星での辛い経験から戦うことに苦悩する珍しいタイプだ。一方のジョルディは自国が滅んだことを知らずに育ったことや幼いためか、デュークフリードより前向きな印象を受けた。
■『ダルタニアス』『ボルテスV』父親が王族だったことを知らずにいた王子さま
次に紹介するのは、父親が王族だったことを知らずにいた“2世代”王子さまだ。
1979年から放送された『未来ロボ ダルタニアス』の主人公・楯剣人は、ザール星間帝国から地球を救うため、仲間たちとともに巨大ロボ・ダルタニアスで戦うこととなる。荒廃した日本の下町で力強く生きる剣人だが、父・隼人の正体はエリオス星の皇位継承者ハーリン。つまり、剣人は下町生まれの王子さまというわけだ。ハーリンは3歳の頃にザールに滅ぼされたエリオスから脱出し、地球に不時着してからは記憶を失ったまま養父母に育てられる。後に自身がエリオス王家の後継者と知らされるも、ザール帝国に奴隷として捕まり消息不明となっていた。
似た境遇として、1977年から放送された『超電磁マシーン ボルテスV』の主人公・剛健一たちの父親ラ・ゴール(剛健太郎)があげられる。ラ・ゴールは王位継承権を持ちながら「角」がないため迫害され、ボアザン星から地球に逃げて来た元王子。地球侵略の司令官プリンス・ハイネルは先妻との間に生まれた息子で、地球人の母を持つ健一たちとは血を分けた兄弟であることが後に判明する。
どちらの父親も奴隷にされたり王族ならではの「お家騒動」勃発と、意外にも主人公である息子よりも劇的な設定に感じた。