■芸能界のシビアさにファンの暴走、炎上問題など現実社会にも通ずるストーリーも見どころ
そのほか、推しのこととなると思考停止したり、隙あらば誰彼かまわず布教したり、「視聴者全員億支払うべき!!」などやたら言い回しが大げさになったりと、推しがいる人なら思わず「わかる……」とうなずいてしまう描写にあふれており、ところどころでクスリとしてしまう。
見る者を惹きつけ、ときに狂わせることすらあるアイ。そんな彼女の輝きがこれでもかというほど描かれているからこそ、その後の展開も活きてくるというものである。
アイの子どもであるアクアとルビーが生まれてからは、事務所の社長とその夫人も巻き込みにぎやかな日常が始まるように。何気ないやりとりの絶妙なテンポや、ところどころで登場するパワーワードがクセになって、ずっと見ていられそうだった。
アクアが子役業に片足を突っ込んだり、ルビーにダンスのセンスがあることが発覚したりと、双子の今後の成長が楽しみになる描写もある。しかしそれも、プロローグにあたる第1章まで……。その先がどんな展開になるかは、ぜひ実際に原作やアニメを見て味わってほしいところだ。
また芸能界が舞台となっているだけあって、輝かしい世界の裏にある闇が描かれているのも見どころ。業界のシビアさはもちろんファンの暴走、炎上問題など、われわれ一般人がかかわりうる問題も取り上げられている。時事問題もたびたび盛り込まれ、アイドル(芸能人)とは? ファンとは?と、あらためて考えさせられる場面も多い。
“完璧で究極のアイドル”であるアイをめぐる物語『【推しの子】』。ネタバレを控えて情報が少なくなってしまったのが心苦しいが、あの情緒がめちゃめちゃになる感覚はぜひとも本編で味わっていただきたいものである。
原作は『週刊ヤングジャンプ』にて連載中、アニメは4月12日放送開始。気になった方は、まずは第1話だけでもチェックしてみてはいかがだろうか。