■「ほうちょう!」

 続いては先ほどご紹介したトラウマとは、種類がまったく異なるトラウマ。今でこそおなじみとなっている敵「トンベリ」だが、その初登場作品は『ファイナルファンタジー5』でプレイヤーに衝撃を与えた。

『FF5』で初めてトンベリに出会ったとき、どのプレイヤーも「弱そうなモンスターだな」と思ったに違いない。しかし左手にランタン、右手に包丁をもった不可思議な生き物が、攻撃もせずに徐々に近づいてくることの不気味さは、むしろドット絵だからこそ余計膨らむ。

 HPが非常に高く、攻撃をしてもビクともせずにじわりじわりと近づき、目の前に立ったが最後、「ほうちょう!」というテロップとともに高火力な連続攻撃を3回してくる。これで味方キャラが死んでしまうことも珍しくないだろう。

 以降のシリーズでは、さらにトラウマ技である「みんなのうらみ」や「みんなの怨念」を習得してくるトンベリ。襲われた際はもう逃げてしまいたくなる。非常に恐ろしい敵だ。

■「逃がすな…逃がすな…逃がすな…」

 最後は、ドット絵が当時の最新鋭の技術により極限まで美しく表現された『ファイナルファンタジー6』から、多くの子どもたちが苦手であろう幽霊に関するエピソードだ。『FF6』では、マッシュ、シャドウ、カイエンの3人が、死者の魂を冥界に送るという魔列車に乗り込むシーンがある。閉じ込められてしまった列車の中には、死者の魂や幽霊が徘徊しているのだ。幽霊にぶつかってしまうと戦闘がはじまり、ゴーストと戦わなければならない。

 しかし、無料で食事ができて回復できるだけでなく、幽霊の中には道具を売ってくれたり、友好的に話せたりと、意外と穏やかに探索を進められる。こうした演出のため、あまり怖くないなと思っているところに、イベントがやってくるのだ。

 列車の外にやってきたところ、「…に、が、さ、ん…」という声とともに現れる幽霊。それも1人2人どころではなく、次々に増えて迫ってくる。そして、左右に行き場がなくなったところで、「逃がすな…逃がすな…逃がすな…」という声とともに車両いっぱいの幽霊に襲われるのだ。ドット絵だからよかったものの、もしもこのシーンが現在の3Dグラフィックで描かれていたなら、怖くて進めない子どもも多くなってしまいそうだ。

 今回は、スーファミ『FF』のナンバリング作品から、当時小学生だった筆者がトラウマになったエピソードを3つ紹介した。2023年6月22日に、いよいよ待望の最新作『ファイナルファンタジー16』が発売となる。同作ではどんな物語が描かれるのか、発売が待たれるばかりだ。

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