戦況に応じて組織の面々に的確な指示を下す“指揮官”。漫画やアニメでは女性の指揮官も多数登場するが、なかにはあまりにも非情かつ冷徹な性格で見る者を震えあがらせるようなキャラクターも存在する。冷徹さのなかに妖しい魅力を秘めた、“女指揮官”たちについて見ていこう。
■冷酷さの裏には悲しき過去…『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』シーマ・ガラハウ
日本を代表するロボットアニメの『機動戦士ガンダム』。初代ガンダムの続編の『機動戦士Zガンダム』に繋がる“宇宙世紀0083年”を舞台としたOVA作品が、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』である。
本作にはコウ・ウラキやアナベル・ガトーといった数々の人気キャラクターが登場するが、作中で女指揮官として活躍するのがシーマ・ガラハウだ。
シーマは元・ジオン公国軍の女将校で、“ならず者”の集まりと言われている「シーマ艦隊」を率いている。彼女自身も好戦的かつ大胆不敵な性格をしており、作中では非常に狡猾なキャラクターとして立ち回っていた。
パイロットとしての腕前もさることながら、群がる敵影を前に「よりどりみどり」と呟くなど、戦いそのものを楽しんでいる様子もうかがえる。
ジオン側の人間にも高圧的な態度で接していたシーマだが、なんと物語終盤では堂々とジオンを裏切り、連邦側に寝返ってしまう。その行いを非難されてもなお、「あたしは、故あれば寝返るのさ!」と堂々と言い放ち、冷徹な一面を見せつけた。
一見すると卑劣極まりないキャラクターに見えるが、これには彼女の悲惨な過去が関係している。元々、ジオン公国で“汚れ仕事”ばかりを任されていたシーマたちは、のちにその責任を押し付けられただけでなく、自身の故郷であったコロニーを失い、帰るべき場所を奪われていたのだ。
常に自分たちの“利”を徹底して動いていたのも、こうした過去から自らの“居場所”を手に入れることに執着したからと考えられる。冷徹、冷酷な立ち振る舞いのその裏に、なんとももの悲しい一面が覗くキャラクターだ。
■文武両道だが性格に難ありな“戦”の天才『キングダム』媧燐
2006年より『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて連載されている原泰久氏の『キングダム』は、今もなおアニメ化、実写映画化が続いている人気作品。古代中国の春秋戦国時代末期を舞台に、“戦国七雄”と呼ばれる大国の激突と、そこに生きる人々の群像劇が描かれている。
本作は「戦」をテーマにしているだけに武将たちをコントロールする指揮官も多数登場するのだが、なかでも“戦の天才”と周りから称される女性が楚の大将軍・媧燐(かりん)だ。
媧燐は黒いショートカットと射るような鋭い目つきが特徴の女性で、なによりほかの武将たちを圧倒するほどの高身長が目を引く。女性でありながら人並外れた怪力を有しているのも特徴で、作中では一蹴りで男性を死に至らしめるなど苛烈な一面も見せている。
その性格は一言で言えば“ドS”。少しでも気に入らないことがあれば同軍の人間であろうが構わずに蹴り飛ばし、「敗戦の豚共」と酷い言葉を浴びせることも。とくに高身長に関してはコンプレックスを抱いており、これを指摘した者には即斬首を命ずるなど、その立ち振る舞いはもはや暴君でしかない。
しかし、その軍略の手腕はまさに天才的。向かってくる軍に対して“煙幕”を使う、“象”をけしかけてかく乱する、自らが前線に出てあえて敵の注目をひきつける……など、数々の“奇策”を絶妙に絡み合わせ、勝利のためには手段を選ばない。
丁重に触れねば暴れ出す爆弾のような気難しさを持っていながら、予測不可能かつ冷酷非情な策で戦況をかき回す、なんとも恐ろしい女指揮官だ。