■ダンスが得意な精鋭たちはとある映画の影響?

 このように、流行を取り入れることの多い同シリーズ。1979年に「スーパー戦隊シリーズ」第3作として放送された『バトルフィーバーJ』は「ディスコブーム」が作品に反映されていたのではないだろうか。

 1975年から79年にかけて日本はまさに空前のディスコブームだった。そのさなか、1978年に日本で公開されたアメリカ映画『サタデー・ナイト・フィーバー』は日本でも大ヒットし、翌年には「フィーバー」が流行語になるほどの人気に。そんな時代に放送された同作は、バトルフィーバー隊が各国の「ダンス」を取り入れた戦術で秘密結社エゴスが送り込む怪人たちと戦うという物語だ。

 ヨーロッパ代表のバトルフランスはフラメンコにも似た「スパニッシュダンス」で、ユーラシア代表・バトルコサックは「コサックダンス」、アメリカ・オセアニア代表のミスアメリカはまさに「ディスコダンス」だった。一方、アジア代表のバトルジャパンは空手や中国拳法などを駆使した「カンフーダンス」、アフリカ代表のバトルケニアは「トロピカルダンス」と、大人になった今見ると「あれ?」と思わず頭をひねりそうなものもあった。

 実在するダンスからオリジナリティあふれるものまで、当時の子どもたちが世界の踊りをイメージしやすいように、制作側が本作で文字通り「戦いながら」表現してくれたのかもしれない。

■意外な競技を取り入れた斬新なアクションと武器

 最後は、1982年に「スーパー戦隊シリーズ」第6作目として放送された『大戦隊ゴーグルファイブ』。人類の歴史の陰で暗躍する暗黒科学帝国デスダークと戦うゴーグルファイブだが、彼らのモチーフは「古代文明」と意外な競技だった。

 ゴーグルレッドは「アトランティス文明」、ゴーグルブラックはインダス・ガンジスなどの「古代アジア文明」、ゴーグルブルーは「エジプト文明」、ゴーグルイエローは「ムー文明」、ゴーグルピンクは「マヤ・インカ文明」だが、これら「古代文明」は変身モチーフのみ。

 実は、同作では1980年にブームの兆しを見せ始めていた「新体操」を、武器やアクションに取り入れていた。

 たとえばゴーグルレッドが使うレッドロープをはじめ、ブルーリング、イエローボール、ブラッククラブなど、どの武器も新体操で使う「手具」をモチーフとしていた。ピンクリボンを操るゴーグルピンクはそもそも新体操選手という設定だ。彼らのアクションにも新体操の動きが取り入れられており、ジャンプや回転、組体操などしなやかさとダイナミックな動きが魅力的でもあった。

 番組放送の前年である1981年には『週刊少年サンデー』であだち充氏の漫画『タッチ』の連載がスタートしており、ヒロイン・浅倉南が新体操部で活躍していたことを思い返せば当時の新体操人気も伺えるかと思う。また、今でこそ男性競技者に注目が集まる「新体操」を、「男の子の番組」と目された当時の戦隊ヒーローに取り入れたのは斬新な試みだったと言えるのではないだろうか。 

 子どもたちが好きなもの、流行ったものが作中に取り入れられていた戦隊ヒーローたち。憧れの道具を武器に戦う彼らの姿は、いつの時代も私たちの目に輝いて見えた。

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