■重すぎる代償…『ゲゲゲの鬼太郎』体が溶けていく「タイタンボウ」の祟り
妖怪がテーマなだけに怖い話も多い『ゲゲゲの鬼太郎』。なかでも有名なのが「足跡の怪」だ。原作は『鬼太郎』シリーズではない短編作品だったが、アニメ第2期43話で放送されると大反響を呼んだ。
ある村の近くに、自然を支配する神「タイタンボウ」の御神体の岩が祀られていた。あるとき二人の男(山田と中村)がやってきて、この岩を削って持ち帰ってしまう。それがタイタンボウの怒りにふれ、村には天変地異や神隠しが起こってしまう。岩の欠片を返せば祟りは収まると考えた鬼太郎だったが、二人は迷信を信じず、岩を返そうとはしなかった。
そのうち、山田に祟りが現れる。気が付くと右手の小指が消えており、そうこうしているうちに右耳、右目、鼻と順番に溶けていく。山田はやっと祟りを信じ、岩を返そうと言うが、岩に魅入られた中村はそれを拒否。ついに山田は頭が丸ごと消えてしまい、首から下だけの姿で走り去っていく。そのあとには血のような赤い足跡が……。足跡を追うと山田の着ていたスーツが残されており、その先に足跡だけが続いていた。
その後、なんとか中村から岩を奪い返した鬼太郎。御神体のもとに行くと、あの赤い足跡も御神体に向かっていた。岩を返しても祟りは収まらず、やがて中村が登場。岩を取り戻しに来たのだが、そこで急に中村の顔が溶け始める。目も溶けてなくなり、ウロウロと歩き回る中村は、そのまま穴に落ちて行った。
そうしてやっとタイタンボウの怒りは鎮まり、神隠しに遭っていた村人も返ってくる。この一件を見届けた村長は、「都会の奴ら おっかねえものがとんと分かってねえんだから……」と吐き捨てるのだった。
■昭和だけに飽き足らず平成の子どもまでも…
理不尽と思えるまでの怒りと残酷な仕打ちで昭和の子どもたちを震え上がらせたタイタンボウだが、ちょうど元号が平成から令和へと変わった2019年、アニメ第6期70話「霊障 足跡の怪」で再び登場している。
このときは顔が溶けていく露骨な描写はなかったものの、“4日ごとに岩を拝まなければならない”など、理不尽さがより強調されていたり、削った岩に魅入られる様子が顕著になったりしているぶん、不気味さはひとしおだ。きっと昭和から平成と語り継がれるトラウマ回になったことだろう。
こうして振り返ってみると、人の世の理不尽さやら神の怒りの理不尽さやら、年齢も時代も関係なく相変わらず怖いものだ。これをアニメでいきなり子どもたちに突きつけていたなんて、なかなか攻めた時代だったなとあらためて思う。