高校バスケットボールをテーマに描いた、井上雄彦氏の人気漫画『SLAM DUNK(スラムダンク)』。主人公・桜木花道をはじめとした個性的で能力の高いキャラたちの圧巻のプレイシーンはもちろん、各チームを率いる監督たちの采配も見どころのひとつだ。そこで今回は、『SLAM DUNK』に登場する監督たちが勝負に出たシーンに注目して、紹介していこう。
■「もう賭けに出るしかない」人心掌握も見事だった湘北・安西先生
最初に紹介するのは、桜木が所属する湘北・安西先生が見せた采配だ。
インターハイ神奈川県予選決勝リーグで湘北が対戦したのは、神奈川屈指の強豪校、海南大附属だった。
湘北の主将・赤木剛憲が1年のときから“ずっと寝る前に思い描いてきた”という、大事な一戦。試合序盤、その赤木がケガをして一時離脱するも、桜木やエース・流川楓の爆発的なプレイにより、湘北は前半を同点で折り返す。
しかし、そこに神奈川No.1プレイヤーの牧紳一が立ちふさがった。牧を起点にしたオフェンスから神宗一郎の3Pが次々と決まり、残り10分時点で10点の差をつけられてしまう。赤木のケガ、ブランク明けの三井、前半に体力を使いすぎた流川……と、明らかにオーバーペースの湘北。ここで満を持して、安西先生が動いた。
まだ後半残り10分あるのにもかかわらず最後のタイムアウトを取った安西先生は、赤木、三井寿、宮城リョータ、流川の4人がかりで、牧1人を封じることを指示する。ほかが手薄になったとしても、それだけの価値があるプレイヤーだと認識したうえでの作戦だった。さらに、スタミナが残っていた桜木には3Pシューターである神の徹底マークを個別に指示。司令塔の牧の歯車を狂わせつつ、神の驚異的な3Pを封じ、海南を完全に抑え込もうとしたのだ。
結果的には敗北したものの、海南相手に1ゴール差まで追い詰めた湘北。初心者の桜木を見事に機能させただけではなく、このタイムアウトから試合の流れは明らかに変わり、チームの士気を高めた人心掌握も見事だった。
「もう賭けに出るしかない」と作戦を伝えた安西先生。さすが“勝負師”の異名を持つだけのことはある。
■「今が叩くべき時だ!!」山王工業・堂本五郎監督
次は、インターハイ2回戦で湘北と対戦した、絶対王者・山王工業高校の堂本五郎監督が見せた采配を紹介しよう。
前半、湘北にリードを許した山王だったが、後半すぐに3Pシュートで逆転したあと、勝負を仕掛ける。それが、山王の伝家の宝刀「ゾーンプレスディフェンス」だった。この「ゾーンプレス」とは、ディフェンス側がプレッシャーをかけてオフェンスのミスを誘発させ、ボールを奪うというディフェンスのことをいう。
山王のゾーンプレスに圧倒されてまったく対応できない湘北は、開始約2分半で14点差もつけられてしまい、たまらずタイムアウトを取る。
大きな点差をつけた山王は選手層も厚いので、主力選手を休ませるという選択肢もあった。しかしここで堂本監督は「ここが勝負だぞ!!」「今が叩くべき時だ!!」と、主力選手を変えずに攻め切る指示を出す。これには名朋工業の監督も「若えのによくわかっているじゃねーか…堂本」と感心していた。
そうして、後半10分で22点もの差をつけた山王。ここで湘北は諦めなかったが、普通は気持ちが折れてもおかしくないほどの点差だろう。勝ちを掴む機会と見たら、そこできっちり決めにいくという堂本監督の強気の采配が見事功を奏したシーンだった。