■心臓が2つある!!
『ダイの大冒険』(原作:三条陸氏・作画:稲田浩司氏)にも、驚くべき“異形”の体の持ち主がいる。それがかつての魔王ハドラーだ。魔族ということもあり、人間と体の構造が違っても当たり前なのかもしれないが、その中でもハドラーは特に異質と言えるだろう。ハドラーには心臓が2つあるのだ。
心臓が2つあると何がすごいのか? ごく単純に言えば、それは命のストックがあるようなものだろう。1つしかない頭を潰されてしまったらそれまでだが、少なくとも体幹部に対する攻撃に対してはかなりの余裕が生まれる。そして、ハドラーはそんな性質を利用して、相手をだまし討ちすることに実際に成功している。
それはヒュンケルとの戦いで、ヒュンケルがハドラーの心臓をブラッディースクライドで貫いて勝利を確信した直後のことだった。 勝負がついたと思ったヒュンケルがハドラーに近づくと、いきなり起き上がったハドラーはヒュンケルの胸を爪で突き刺し、「あいにくオレの心臓は左右にひとつずつあってな…」とドヤ顔で種明かしをする。しかもそのまま体内にメラゾーマを流し込んだので、ヒュンケルは内側から焼かれて動けなくなってしまう。
かつての魔王とはいえ初登場時から小物感が漂っていたハドラーのことは、読者も結構侮っていたところがあったので、ヒュンケルにもあっさりとやられてしまうのだろうと思っていただけに、予想を裏切られる展開だった。
『週刊少年ジャンプ』の人気作品には、“異形”とも言える特異な身体構造を持つキャラがしばしば登場し、主人公たちを苦しめることがある。“異形”であることの性質や利点を知り尽くし、それをどう利用すれば優位に戦いを進めることができるかに長けているのが、そうしたキャラが強敵たり得るゆえんだ。人間の常識を越えた肉体を持つからこそ、定石にとらわれない戦い方をも身に付けている。“異形”の肉体を持つキャラが敵として出てきたら、ぜひその戦い方に注目してみてほしい。