『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』 Blu-rayメモリアルボックス(C)創通・サンライズ

 1979~1980年に放送されたTVアニメ『機動戦士ガンダム』を皮切りに、実に40年以上の長きにわたり人気を集める『ガンダム』シリーズ。TVアニメのみならず劇場版やOVAなど、これまで映像化された作品は数え方にもよるが30を優に超える。

 記念すべき第1作である『機動戦士ガンダム』のアムロ・レイをはじめ、歴代の主人公は大半が少年だった。アムロがそうであったようにろくに説明も受けないままガンダムを乗りこなしたり、あるいは元々モビルスーツ操縦の訓練を受けていたりと、各作品の主人公はある程度一定のパターンに当てはまるが、作品によっては、そういった定番からはみ出した異色の特徴を持つ主人公がいる。

 そこで、『ガンダム』シリーズの中でも一風変わった主人公たちを3人紹介したい。

■主人公だけどガンダムには乗らない! 歴代最年少主人公のアル

 シリーズ初のOVA作品であり、富野由悠季以外が監督した(監督:高山文彦)最初の作品でもある『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(1989年/全6話)の主人公が、アルフレッド・イズルハだ。

 アルという愛称で呼ばれる彼の年齢は、なんと歴代主人公の中でも最年少の11歳。取り立てて優れたところがあるわけでもなく、複雑な家庭環境の中で過ごす退屈な日常を変えてくれるかもしれないという思いから戦争に憧れを持つ、平凡な少年だ。中立の立場にあったサイド6のリボーコロニーで生まれ育ったアルだが、ジオン軍の兵士であるバーニィことバーナード・ワイズマンと出会う。もう1人の主人公とも言えるバーニィは、連邦軍が開発した新型ガンダム「アレックス」の奪取を目的とする特殊部隊サイクロプス隊に編入される。

 つまり、バーニィの視点から見ると、『ポケットの中の戦争』はガンダムを倒す側のストーリーであり、それ自体がガンダムシリーズの作品としては異色と言える。派手なMS戦は少ないし、アレックスの登場もかなり遅く、平凡な少年アルがバーニィという兵士を見る、その視線を通して、戦争の虚しさを浮かび上がらせる作品になっているのだ。

 当然、アルはガンダムはおろかMSにすら乗ることはなく、一貫して傍観者のまま戦いの行く末を見ることになる。年相応に幼く純粋だったアルがバーニィと知り合い、経験する別れ。最後の展開はいつ観返しても胸が痛くなってしまう。

 ガンダムに乗って敵を倒すのが主人公、というイメージを初めて覆し、1人の少年の成長にフォーカスしたことが『ガンダム』シリーズの幅を広げたとも考えられ、その意味でも特筆すべき主人公だったと言えるだろう。

 ちなみに、よく知られている「嘘だといってよ、バーニィ」は劇中ではアルは言っておらず(似たセリフはある)、第5話のサブタイトルだ。

■ガンダム要らずの生身の戦闘力!? ステゴロでも強いドモン・カッシュ

 主人公以前に作品自体が『ガンダム』シリーズの中ではひときわ異彩を放っており、根強いファンも多い『機動武闘伝Gガンダム』(1994~1995年/全49話)。その主人公であるドモン・カッシュもまた、異色の主人公と言えるだろう。

 一言で言えば、「ガンダムは要らないのでは?」と思えるくらい本人が強いのだ。大規模な戦争を避けるため「ガンダムファイト」と称して各国の代表としてガンダム同士を戦わせ、優勝した国にその後4年間の主導権を与えるという設定の『機動武闘伝Gガンダム』では、ガンダムファイトに使用されるのはMF(モビルファイター)と呼ばれるものだ。MFには、従来のレバーやボタンではなく、モビルトレースシステムという独自の操縦方法が採用されていて、簡単に言うとパイロット(ガンダムファイター)自身の動きをMFに反映させるのだ。その反面、機体が受けたダメージもガンダムファイターに返ってくるという諸刃の剣。

 そのため、作中に登場するガンダムファイターは皆、生身でも相当な戦闘力を誇っており、ネオジャパン代表であるドモンもまた、驚愕の強さを秘めている。四方八方から機関銃で撃たれながら銃弾を全て素手でつかんでみせたのはほんの序の口で、ガンダムシュピーゲルの剣の一撃を日本刀で受け止めるシーンなどは、それまでの『ガンダム』シリーズを観てきた視聴者からするとかなりシュールだったことは間違いない。

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