■『海がきこえる』に『紅の豚』のポルコ・ロッソが出演!?

 氷室冴子氏による小説を原作に、望月智充氏が監督を務め制作されたのが、1993年に放送された『海がきこえる』だ。高知県を舞台に甘酸っぱい高校生たちの青春を描いた本作では、思わず目を疑ってしまうようなクロスオーバーが登場した。

 それは、作中での文化祭のシーンにて。模擬店が立ち並び、訪れた客たちが飲食を楽しんでいるスペースで後ろ向きに座っていたのが、1992年に公開された『紅の豚』の主人公であるポルコ・ロッソだった。(参考:『スタジオジブリ大解剖』 (サンエイムック))

 後ろ姿だけの登場なのだが、かわいらしい耳とトレードマークの白いスカーフまでしっかり描かれており、その姿だけで本人だとわかる。

 クロスオーバーはこれだけではない。1994年公開の映画『平成狸合戦ぽんぽこ』の本屋の店先に張り出してあるポスターが『海がきこえる』のポスターであったり、正吉が駅の階段を駆け上がるシーンでは、伏し目がちに階段をくだっていく本作のヒロイン・武藤里伽子らしき人物が描かれていたりもする。

 ちなみに、本作のクロスオーバーは1995年公開の映画『耳をすませば』でも登場し、主人公の月島雫が電車に乗り込んだシーンで、反対側のホームに里伽子と主人公の杜崎拓によく似た人影が映り込んでいた。いずれも短いシーンなのだが、見つけられたら思わず誰かに話したくなってしまうだろう。

■【番外編】ピクサー映画『トイ・ストーリー3』に“トトロ”が登場!

 紹介してきたように、スタジオジブリ作品同士のクロスオーバーはたびたび見られるが、実は会社の垣根を越えた驚きのクロスオーバーもあった。

 それが、2010年公開の映画『トイ・ストーリー3』への“トトロ”のカメオ出演だ。おもちゃが大好きな少女のボニー・アンダーソンのぬいぐるみとして登場するトトロ。ほかのおもちゃたちよりもやや大きめに描かれているその体は存在感があり、トトロのカメオ出演に気づいた人は多いだろう。

 この“異例”のカメオ出演となった経緯について、『トイ・ストーリー3』の制作スタッフは、記者会見で「宮崎監督へのオマージュ」と明かしている。もともとピクサーとスタジオジブリは友好関係にあったこともあり、ピクサーのスタッフたちはトトロの出演を打診。その結果「おもちゃとして出演させることに、快諾をいただきました」と、宮崎駿監督から了承を得たエピソードを語っていた。

 もともと、ディズニー映画やピクサー映画はほかの作品からキャラクターがカメオ出演することが多いのだが、スタジオジブリからのカメオ出演は、海外のファンもおおいに沸いていた。

 

 スタジオジブリ作品の隠されたクロスオーバーの数々。これらの豪華すぎる共演のなかには目を凝らさないと気づくことができないほどのものもあり、細部にわたって丁寧に作品が作られていることを物語っている。

 今回は有名どころをご紹介したが、スタジオジブリ作品のクロスオーバーはまだまだ存在するようだ。“隠れキャラ”を探しながら、名作たちを見返してみるのも、またひとつの楽しみ方なのかもしれない。

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