■入学から始まったバスケ選手の物語
『黒子のバスケ』も入学シーンから物語が始まる。あまりに影が薄すぎる主人公の黒子テツヤは、部活の勧誘が一番盛り上がる時期に、勧誘をする先輩たちに全く気づかれなかった。
本を読みながら歩いているのに、文芸部の人は自分の後ろを歩く人だけに声をかけたり、バスケ部への入部届も誰にも気づかれることなく提出したりと、1話からその異質なほど薄い存在感を印象づける展開に。バスケ部に入部した後もそこにいるのに気づかれず、周りを驚かせる描写が多かった。
同作はちょっと変わった入学シーンといえるだろう。もし入学時にスルーされてしまったら、自分は黒子のように気配を消すのがうまいのかも? と思いたいところだ。
同じくバスケ漫画の『SLAM DUNK』の主人公の桜木花道は、物語開始当初、実はバスケを毛嫌いしていた。
それは中3のときに「バスケ部の人が好き」とフラレてしまったため。傷心のまま高校に入学した花道は、入学後もバスケットという言葉に過剰に嫌悪感を示していた。
しかしそんなときに出会ったのが好みのタイプの女性である赤木晴子。いきなり「バスケットはお好きですか?」と話しかけられた花道は、バスケのルールも知らないのにすんなりとバスケ部に入部してしまう。
バスケの見学をしようと放課後二人きりの体育館で話をするシーンなどはまさに憧れの高校生活そのもの。同作のファンにとっては「バスケットはお好きですか?」は青春の合い言葉だろう。
さて、入学そのものではなく、入学するために頑張ったのは『SPY×FAMILY』。父であるロイドの任務遂行のために、養子のアーニャが入学する必要があったのが国内トップクラスの名門校であるイーデン校だ。その入学倍率はとんでもなく高く、試験に合格するためにロイドとヨル、アーニャの3人でオペラや美術館に行って一般常識を身につけたり、何度も面接の練習を繰り返していた。
試験は筆記試験と三者面談前の素行の抜き打ち審査と三者面談。困難に立ち向かいなんとか補欠合格を果たしたアーニャの頑張りを思うと、入学シーンの感慨もひとしおだった、
その後も友達のために怒るアーニャの姿や、のちも交流が続くダミアンやベッキーとの出会いなど、小さな体で頑張るアーニャを応援せずにはいられない。
人生を変える出会いがあるかもしれない入学式。現実ではなかなかないと頭ではわかっていながらも、漫画のような出来事が起きないかなとつい期待をしてしまうものだ。