漫画やアニメでは、物語の途中に重要なキャラクターが命を落としてしまう展開も珍しくはない。脇役だけでなく、時には主人公までが途中退場してしまうような作品もあるが、そうしたショックから一転、一時は止まっていたはずの心臓が再び動き出すなんてこともある。バトル漫画ではこれまで数多くの能力を持つキャラが登場してきたが、そんな中でも特に読者を驚かせてきたのが、この「心肺蘇生の能力」を持つキャラではないだろうか。
「勝った!」と思った矢先に相手を絶望に叩き落としたり、「死んでしまった!」という絶望から希望の光を射してくれたり、二転三転する展開の最後のクライマックスとして描かれる「心肺蘇生」のシーン。今回は、そんな驚きの心肺蘇生ギミックを実現したキャラクターたちを紹介したい。
■電気の力で心臓マッサージ
一番手は、尾田栄一郎氏の漫画『ONE PIECE』からエネル。空島編で戦った自然系「ゴロゴロの実」の能力者で、雷による攻撃に加え、自身を電気エネルギーに変えての高速移動、しまいには心綱(マントラ)という心を読む技まで扱う、神を自称する最強の敵だ。
空島での戦闘は、麦わらの一味・神の軍団・シャンディアの3勢力によるサバイバルだった。生き残ったのはエネルの他4人。圧倒的なエネルの力の前に、戦士たちはなす術なく倒れていく。
そんな中、シャンディアの戦士・ワイパーが、海楼石を使ってエネルの動きを止めることに成功。そのまま右手に仕込んである「排撃貝(リジェクトダイアル)」で自身の体も破壊してしまうほどの衝撃でエネルを攻撃する。
特大の衝撃をまともに食らったエネルは白目を剥いて倒れ、致命傷を受ける。しかしそれも束の間、倒れたエネルの体が雷に包まれたかと思えば、心臓が力強く脈打つ音が響く。なんとエネルはゴロゴロの実の能力で自身の心臓をマッサージし、再び立ち上がったのだった。
初登場だった自然系の圧倒的な力に加えて、心綱(マントラ)による先読み、ついにはこの蘇生が決め手となり、エネルは『ONE PIECE』史上でも未だ「最強」候補に挙げられるキャラのひとりとなっている。
■死後さらに強まる念を使っての蘇生
続いて、冨樫義博氏の漫画『HUNTER×HUNTER』より、世界中のファンが待ち望んだヒソカvsクロロ戦から。
コミックス1巻まるごと使った、どちらが勝つか全く分からない激戦ではあったものの、ふたを開けてみれば終始クロロが優勢だった。結果、ヒソカは死亡。このとき、旅団メンバーが複数人集まってヒソカの死亡を確認している。
爆破された顔はゾンビのようで、左手の全ての指と右足は欠損しており、ヒソカの退場は確定したかに見えた。ところが、しばらくするとヒソカの念能力である「伸縮自在の愛」が発動し自らの心臓を愛撫し始める。「死後さらに強まる念」として強力な効果を発揮したようで、これにより心臓が再び動き出しまさかの生還。そして欠損した指や足は「伸縮自在の愛」と「薄っぺらな嘘」で補い完全復活を果たした。
今回の戦いでは、人形が緩衝材になり重要な内臓が破壊されなかったこと。死因が「肉の壁と爆破で酸欠になっての窒息死」だったこと。それらさまざまな偶然が重なっての一か八かの蘇生ではあったが、さすがヒソカ。まさか死ぬとは、と多くの読者がショックを受けた矢先、その展開を上回る「死後さらに強まる念」による心肺蘇生が行われたのだった。1ページ先の展開も読めない冨樫作品ならではの復活と言えるだろう。