幼いころ、夕方に食卓を囲んでアニメを見たという経験がある人は多いだろう。何十年か経た今でも、なぜかその光景は鮮明に思い出せるものだ。それほど、幼いころの経験や体験は我々の心に深く刻み込まれているものである。
昭和時代に放送されたアニメには『機動戦士ガンダム』や『一休さん』、『ベルサイユのばら』に『フランダースの犬』など子どもたちの誰もが見ていたような作品が多数あったが、その一方で、とても子ども向けとは思えないグロテスクな表現や救いのない展開が描かれることも少なくなかった。
70年代に放送されたアニメでは動物や虫が主人公となるアニメも多く、なぜかそういったジャンルの作品にこそ、幼心に「怖い」と感じるシーンがあった。筆者はリアルタイム世代ではなく、これらの作品を夕方の再放送で見て震え上がっていたが、今回は1970年代に作られたアニメの中から、怖かった「動物・虫が主人公」の作品をいくつか振り返りたい。
■『みなしごハッチ』カマキチおじさんの最期
まずは1970年放送のタツノコプロ製作のアニメ『昆虫物語 みなしごハッチ』。スズメバチに襲われ母親と行き別れになってしまった主人公のミツバチ・ハッチが本当の母親を探して旅をするという物語だが、その道中には苦難があふれていた。
虫の世界は差別や暴力まみれで、ハッチはほかの虫にいじめられたり、弱肉強食の世界の中で、同じ時間を過ごしたほかの虫が命を落としたりということも少なくなかった。
特に、はじめは悪役として登場したものの、途中からハッチのことを助けてくれるようになったカマキリのカマキチおじさんが物語のラストでスズメバチの大群に襲われてあえなく死んでいくさまは目も当てられなかった。
なお、本作における人間の位置づけは、首から上が見えないように描かれた悪役で、これは人間が環境破壊をして虫や動物にとって甚大な被害をもたらしているということを描写するためだという。
ちなみに、同作と同じくミツバチが主人公で、主人公が旅をしていくというテーマの作品では1975年放送の日本アニメーション製作のアニメ『みつばちマーヤの冒険』があるが、こちらはここまで残酷でシリアスな展開ではなかった。