■強力タッグが仕掛ける“なりたい自分”への成長劇『しゅごキャラ!』PEACH−PIT
PEACH−PITは千道万里氏、えばら渋子氏による女性漫画家ユニットで、漫画、アニメともに大人気となった『ローゼンメイデン』や、『ZOMBIE−LOAN』といった、スタイリッシュアクション作品を手掛けている。
大人向けの作品が多い二人だが、2006年に『なかよし』(講談社)で少女漫画の『しゅごキャラ!』を連載したことでも有名だ。
本作では周囲の児童から一目置かれる小学生・日奈森あむが、“なりたい自分”に生まれ変わるため、“しゅごキャラ”と呼ばれる存在たちと協力しながら、戦いのなかで成長していく現代ファンタジー作品となっている。
小学生をキャラクターに据えた作品ではあるが、作中のファッションやデザインには本作を手掛けた二人のセンスがこれでもかと詰め込まれており、キャラクター一人一人が強烈な存在感を放っている。
そしてやはり、本作のテーマにもなっている“なりたい自分”について悩み、考えさせられるストーリー構成こそ、本作の最大の特徴だろう。“なりたい自分”という一つの“夢”と、それを阻む“現実”との狭間で揺らぐ登場人物たちの気持ちは、知らず知らずのうちに物語のなかに強い共感を生み、子どもだけではなく大人もぐっと惹きこまれてしまう。
ファンタジーあり、リアルあり、バトルありという盛りだくさんな作品のなかで、“なりたい自分”に向けて成長していくキャラクターたちの姿に、目を奪われること必至の一作だ。
“大人向け漫画”と“少女漫画”というと、どこか正反対な特性を持っているように思えるが、今回紹介した作品はどれも、作者が大人向け漫画のなかで培ったノウハウや作風をしっかりと活かし、少女漫画として新たな世界観を構築している。
大人が読んでも自然と惹きつけられるものがあるのは、作者らの力量の高さがなせる業なのかもしれない。