安野モヨコ『シュガシュガルーン』にPEACH-PIT『しゅごキャラ!』も…“大人向け作品”が多い漫画家が手掛けた“少女漫画”3選の画像
なかよしコミックス『シュガシュガルーン』第1巻(講談社)

 おのずと漫画家ごとに得意とする“読者層”は定まってくるものだが、なかには大人向け漫画を多く手掛けている作者が、あえて“少女向け”というジャンルに挑戦した作品も存在する。普段は大人向け漫画を手掛けている作者たちによって描かれた、少女漫画の数々について見ていこう。

■魔界のクイーンの座を狙う少女たちの破天荒な“恋”の駆け引き『シュガシュガルーン』安野モヨコ

 安野モヨコ氏と言えば、『働きマン』や『さくらん』といった、さまざまな“職業”を題材に女性主人公が活躍するスタイリッシュな作風がウリの漫画家である。『新世紀エヴァンゲリオン』を手掛けたことで有名な監督・庵野秀明氏と結婚した際、苗字が偶然にも「あんの」だったことから話題となった。

 そんな安野氏が手掛けた少女漫画といえば、2003年から『なかよし』(講談社)で連載された『シュガシュガルーン』である。

 魔界に住んでいた少女・ショコラとバニラは、親友でありつつも魔界の“次期クイーン候補”のライバルという関係になってしまう。クイーンになるためには人間界で人々と交流し、より多くの人間のハート(自身への想いの結晶)を集める必要があった。

 クイーンの座を賭けた争奪戦に人間界で奮闘するショコラとバニラを軸に“恋愛”の要素を絡め、彼女らのドタバタした日常を舞台としたストーリーとなっている。

 少女漫画でありながら、キャラクターたちの破天荒な立ち振る舞いがそのまま面白さに直結するあたりは、これが“安野作品”であることを読者に感じさせる痛快な点だ。

 作画についても少女漫画の雰囲気に合わせつつ、安野作品らしいスレンダーで目が大きいキャラクターに、ファッショナブルなデザインを取り入れている。

 魔界のクイーン候補……というファンタジー色の強い作品背景を持ちながらも、それでいて作風を崩さずにキャラクターたちを生き生きと動かすことに成功している点に、安野氏の漫画家としての高い力量が感じられる一作だ。

■“神さま”となった少女が幸せに向かって歩き出す物語『かみちゃまかりん』こげどんぼ*

 こげどんぼ*氏はキャラクターショップ「ゲーマーズ」のマスコット企画『デ・ジ・キャラット』の原案を手掛けたことで有名な漫画家だ。『デ・ジ・キャラット』のヒットから男性オタク向けの作品を手掛けるイメージが強いが、一方で少女漫画雑誌でも連載を持ったことから中学生を中心とした女子のファンも多い。

 2002年に『なかよし』(講談社)で連載された『かみちゃまかりん』は、こげどんぼ*氏によって手掛けられた少女漫画だ。幼いころに両親を、そして、のちに最愛のペットまで失ってしまった中学一年生の主人公・花園花鈴が、ひょんなことから「神さま」になることで、さまざまな事件へと巻き込まれていく……という本作。

 少女漫画でありながらも、明るい絵柄のなかにどこか暗さやつらさといったものを感じさせる絶妙なストーリー配分は、まさにこげどんぼ*氏の作風が色濃く滲み出ている部分だろう。

 また、美麗なイラストは少女漫画とも相性が良く、描かれるキャラクターはどれも可愛く非常に魅力的。とくにカラーイラストのクオリティは圧倒的で、漫画家とイラストレーターを兼業しているこげどんぼ*氏の実力がいかんなく発揮されている。

 うまくいかない現実のなかで、それでも自分なりに奮闘していく花鈴の姿が描かれた『かみちゃまかりん』は、日々に奮闘する大人の女性にも刺さる作品だろう。

  1. 1
  2. 2
  3. 3