■『ジョジョの奇妙な冒険』のジャック・ザ・リパー

 荒木飛呂彦氏の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第一部にはジャック・ザ・リパーなる、吸血鬼のディオ・ブランドーの下僕となったキャラが登場する。彼は女性を惨殺しているところをディオに見られ、「その悪の心があればゾンビにはちょうどいい」と屍生人に変えられてしまう。

 その見た目は、まさに荒くれ者であり、話す内容や口調も悪そのものといった印象。「この夜遅くまで遊んでる堕落した女がァーッ!!」というセリフとともに、メスのような刃物で女性に襲いかかるシーンはそれだけで恐ろしい。 

 物語においては、ジョナサン、ツェペリ、スピードワゴンの3人を倒すようにディオに命じられ3人を急襲。屍生人になってからは、刃物で何かを切り刻むことに強い生きがいを感じており、自分の指や顔さえ傷つけていた。そのことから、スピードワゴンからは「残虐性!異常性においてディオ以上だ」といわれる。

 しかし3人との戦いにおいては、ツェペリに圧倒されたのち、ジョナサンの「仙道波紋疾走」を叩きこまれて消滅してしまった。

 この作品においては、ジャック・ザ・リッパーの凶悪さや異常性にフォーカスしたキャラクター設定となっている。自身の顔にナイフを突き刺しながらの宣戦布告には、ジョナサンたちだけでなく、多くの読者が狂気を感じたのではないだろうか。

■『終末のワルキューレ』のジャック・ザ・リッパー

 2023年1月からNetflixでアニメ第2期の配信が始まった『終末のワルキューレ』に登場するジャック・ザ・リッパーは、神対人類最終闘争にて、人間側の闘士として半身半人の英雄・ヘラクレスとの死闘を繰り広げた。

 いかにもイギリス紳士といった貴族階級のような服装と右目に装着した片眼鏡により、知的な印象を受ける見た目をしている本作のジャック。しかし生前の残虐すぎる犯行により、ジャックを神殺しの13人に選出したブリュンヒルデから「人類の中で一番キライなクソ中のクソのゲボカス野郎」と酷評されている。

 本作品では、ジャックは悲惨な過去を背負っているという設定が描かれている。貧民街で、売春婦の子として生まれ育ったが、右目の「見た相手の感情を、色によって判別できる」という特殊能力を駆使して生き抜いてきた。愛してくれていると思っていた母親の裏切りを受け、母を殺害。その際に、他人の恐怖する感情の色を知ったジャックは、その色に魅せられて、殺人を繰り返していく。

 本作品におけるジャックの真相は、2022年12月より連載されているスピンオフ『終末のワルキューレ奇譚 ジャック・ザ・リッパーの事件簿』で描かれている。ご覧いただくと、ジャックのその意外な真実に驚くだろう。

 今回は「切り裂きジャック」が登場した作品と、どのようなキャラクターとして登場しているのかについて紹介した。今なお、さまざまな作品に強烈な影響を与えているジャック・ザ・リッパーだが、実在した連続殺人鬼であるということは忘れてはいけない。そのうえで、ジャック・ザ・リッパーの設定を比較するのも、各作品の解釈が見られて面白いので、おすすめだ。

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