織田信長に土方歳三、ジャンヌ・ダルクにアインシュタインにナイチンゲールなど、歴史上の偉人たちがフィクションのキャラとして登場する漫画は数多いが、大犯罪者である「ジャック・ザ・リッパー:切り裂きジャック」もまた、そのうちのひとりだろう。
「切り裂きジャック」は、1888年にイギリス・ロンドンのイーストエンドのスラム街にいた娼婦を相手に犯行を繰り返した、正体不明の連続殺人犯の通称。その残忍な犯行手口がメディアの報道により、未解決事件として世界的に知られることになった。数多くのフィクション作品がこの事件をモチーフに選んでおり、古くは切り裂きジャックをモデルとしたベロック・ローンズ氏の小説『下宿人』を、1927年にアルフレッド・ヒッチコック監督が映画化。以降、今でも多くの漫画やアニメ、映画作品に「切り裂きジャック」が登場している。
そこで、今回は「切り裂きジャック」が登場した日本の漫画作品と、どのようなキャラクターとして登場してきたかについて紹介したい。
■『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』のジャック・ザ・リッパー
2002年公開の映画『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』に登場するジャック・ザ・リッパーは、参加者である子どもたちの命を賭けたゲーム「オールドタイム・ロンドン」のラスボスとして君臨する人物だった。ジャックを逮捕できれば、ゲームクリアとなるのだ。
本作で描かれたジャックの設定は、母親に捨てられた浮浪児というもの。19世紀のイギリスは、産業革命による貧富の格差により、繁栄による光の側面と貧民街という闇の側面があったのだが、ジャックは闇の側面の弊害を受けて育った。
そして、小説『シャーロック・ホームズ』作品に出てくる、ホームズの宿敵である「犯罪界のナポレオン」ことモリアーティ教授と出会う。モリアーティに犯罪者としての才能を見出されたジャックは一流の殺し屋として育て上げられた。こうして、女性ばかりを狙った殺人を犯していくジャック。一方、コナンはゲーム内にあるヒントをもとに、事件の真相を解き明かしていくという展開だ。
本作の真犯人は、ジャックの子孫として明らかになる。そのことを世間に公表されるのを恐れた結果、殺人を起こしてしまうというなんとも皮肉めいた結末を辿る。
小説家・野沢尚氏がアニメ用に脚本を手がけた唯一の作品でもある本作。氏のシナリオによって、まるで自分自身がゲーム内に入り込んでしまったかのような感覚に陥る、非常に緊迫感のある作品だ。