漫画の原作者がなんらかの形で自身の作品に“出演”することは少なくない。作品の展開に枠外でツッコミを入れたり、解説役として登場したり、オマケだけでの登場だったり、モブキャラとして映り込んでいたり……とその方法はさまざまだが、なかには自身をキャラとしてしっかり活躍させているケースもある。今回はそのなかから3名の作者をピックアップしてご紹介。それぞれの暴れっぷり(!?)を知って、楽しんでいただければ幸いである。
■さまざまな作品で重要キャラとして活躍…「手塚治虫」
漫画の神様・手塚治虫氏は、キャラクター化した自分をよく作品に出すことで知られている。
たとえば『ブラック・ジャック』で登場する“手塚”は、回生病院で働く外科医かつBJの医大時代からの友人だ。「執念」(秋田文庫版3巻収録)や「お医者さんごっこ」(同10巻収録)など、主要キャラとして活躍するエピソードも多く、BJとお互い気心の知れた仲であることもうかがえる。
またこの手塚は別で漫画家として登場することもあるが、その場合は「シメキリーッ」と叫びのたうち回る奇病“慢性締め切り病”を患う、記者に自身の作品を“マンネリな内容”と評されてしまうなど、自虐ネタが盛りだくさんだ。
また“バンパイヤ族”と人間の戦いを描く『バンパイヤ』では、漫画家かつアニメーション制作会社「虫プロダクション」の社長・手塚治虫として登場し、主人公であるバンパイヤ族の少年・トッペイを雇ったのをきっかけに事件に巻き込まれることに。敵に殺されそうになったり物語の流れを変える活躍を見せたりと、いち登場人物として存在感を放っている。
そのほか『七色いんこ』には、主人公・七色いんこが漫画の世界から飛び出し、原作者たる手塚治虫に自身にとって不都合な設定を取り消すよう直談判するシーンも出てくる。フィクションと現実、それぞれ別の世界にいるはずの存在が交わり合う演出には、驚きつつもぞくりとさせられた。
■原作者の権限を活用して気ままに振る舞う「鳥山明」
『ドラゴンボール』で知られる鳥山明氏も、自身の代表作のひとつ『Dr. スランプ』にて、登場人物のひとり・トリヤマとしてたびたび登場していた。その姿には“くちばしがGペンの鳥”、作者の自画像としてよく知られている“ガスマスクを着用したロボット”、“メガネとマスクをつけた人間”といったバリエーションがある。
トリヤマは漫画家および本作の作者という設定で、単にモブキャラとして登場するだけでなく、メタな立場からストーリーにかかわることも。
ペンギン村でカンケリ大会やレースを企画したり、「んちゃ!10年後のペンギン村の巻」のエピソードではネタ探しのために10年後の世界に飛んだりと、彼の行動をきっかけに話が始まるケースも少なくない。
“原作者の権限”でやりたい放題やっては怒られる、というのが定番ネタで、ギャグ漫画ならではの活躍を見せていた。