「ジャンプ史上最強の主人公は誰なのか?」という問いは、いつの時代も議論の的であり、明確な答えの出ない難題だ。そのなかで最強候補として毎回名前が挙がるのが、秋本治『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の主人公、両津勘吉である。並みの爆発では死なず、月面に取り残されても1カ月生き延びる両さん……。はたして、彼に勝てる生物は地球上に存在するのだろうか?
■両さんの耐衝撃力は1450トン、腕力は132トン
90年代後半に大ブームとなった、漫画やアニメの世界を科学的に解明する『空想科学読本』シリーズ。その著者である柳田理科雄が、「空想未来研究所2.0」というコンテンツのなかで両さんの肉体について考察している。
それによると、コミックス71巻「それゆけ香港!の巻」でロケットが直撃しても生きていたエピソードをもとに導き出した耐衝撃力が1450トン。同様に、コミックス72巻「晴天ひきうけます!の巻」で、野球の試合中に三塁からホームまで一直線に人間を投げたエピソードから、腕力は132トンあると推測できるそうだ。
■勝てる可能性があるのは人間大の虫類のみ
このデータをもとに、ごくごく単純に考えてみようと思う。両さんに勝つ条件を、132トンの攻撃に耐えるボディを持つことと、最低でも1450トンを超える攻撃力を繰り出せることの2つに絞ったら、この条件に当てはまる生物はいるのか? いや……いるわけがない。
ただ一つ可能性があるとしたら、「人間大になった節足動物なら、あるいは……」ということだ。漫画『テラフォーマーズ』(原作・貴家悠、作画・橘賢一)では、ゴキブリ本来の機能である素早さ、しぶとさ、頑丈な甲皮を残したまま巨大化したゴキブリが、人間をはるかに凌ぐ驚異の戦闘能力を持っていた。このように人間大まで大きくなった虫類であれば、両さんに勝てる種族も存在するかもしれない。
■地球最強生物クマムシはあっさり陥落
ちなみに、最強生物と名高い「クマムシ」はどうか(分類上“虫”ではないが)。
体長約0.1〜1ミリのこの小さな生物は、体重の85パーセントを占める水分量を3パーセント以下まで減らした乾燥状態にも、マイナス273度の低温から100度の高温にも、真空から7万5000気圧(1平方センチメートルに7万5000キログラムの圧力がかかった状態)の高気圧にも、高線量の放射線にも耐えることができる。
そのため、“過酷な状況下で両さんとクマムシどちらが生き残るか”というのなら、さすがにクマムシに分があるだろう。
しかしこれらの最強能力が発動するのは、厳しい環境下で活動を停止する“乾眠”と呼ばれる状態に入ったときのみ。普段のクマムシは指で押せば簡単に潰れるし、火や殺虫剤で死ぬらしい。また乾燥が急激すぎると、乾眠が間に合わずに死ぬ。そう考えると、たとえクマムシが人間大になったとしても両さんの相手ではないのだ。