■最強の硬度を持つクロカタゾウムシ

 両さんの攻撃にも負けない硬いボディなら、『テラフォーマーズ』にも登場した「クロカタゾウムシ」が第一候補に挙がる。人に踏まれても車に挽かれても無傷、標本用の虫ピンも刺さらないという、硬い外骨格の持ち主だ。

 先の柳田氏と昆虫学者の丸山宗利氏がタッグを組んだ『空想科学昆虫図鑑』(西東社)では、このクロカタゾウムシが人間大(体長150センチ)になった場合の防御力を算出している。それによると、鋭くとがった直径5cmの鉄棒を1000トンの力で押しつけても刺さらないというから、両さんの腕力にも十分耐えられる強度だ。

 ただこのクロカタゾウムシ、すべてを捨ててひたすら防御に徹してきたため、攻撃力は皆無。両さんに倒されはしないが倒すこともないため、結果はドローといったところか。

■最強のパンチ力を持つモンハナシャコ

 それでは逆に、両さんの防御力に勝る攻撃力を持った生物はいないか。考えられるのは、最強のパンチ力を持つ「モンハナシャコ」だ。こちらも『テラフォーマーズ』に登場し、クロカタゾウムシの力を持ったゴキブリに見事勝利していた。

 カリフォルニア大学の研究によると、モンハナシャコのパンチ力は400から1500ニュートン。1ニュートン=102グラムとして、最大153キログラムの威力だ。

 そしてこれもまた柳田氏の計算によると、モンハナシャコが体長150センチになった場合、パンチの速度は時速256キロ。仮に体重に比例する筋力を持っていたとすると、パンチのエネルギーは1万倍になるそうだ。

 つまり、モンハナシャコの攻撃力は1530トン。両さんの耐衝撃力1450トンに勝る。

■モンハナシャコとバトルをするなら…勝負は一撃?

 モンハナシャコが両さんに勝てる可能性を持つことは分かったが、“耐衝撃力1450トン”というのが両さんの限界値とは限らない。場合によっては、両さんはモンハナシャコが繰り出す1530トンのパンチに耐える可能性を残している。

 またモンハナシャコはあまりの攻撃力の高さゆえ、脚にダメージを蓄積している様子がよく観察されるそうだ。2020年の研究では、モンハナシャコが脚のダメージを考慮してパンチ力を微調整している可能性が報告されている。つまり、モンハナシャコが全力で撃てる数には限りがあるということだ。ましてや全力で空振りなんてしようものなら、その衝撃がすべて自分の関節に返ってくるわけだから、二撃目を撃てる保証はない。

 両さんの立場で考えると、新幹線並みのスピードで飛んでくる一撃目を交わすか、シャコの弱点である“目”をいち早く攻撃するなどしてパンチを封じることができれば、勝てる可能性は非常に高い。

 モンハナシャコの外骨格が特別硬いという記述は見当たらないし、タコやイカに捕食されることもあるというから、もしも人間大であったとしても両さんの腕力で砕けない硬さではないだろう。

 

 結論として、まず両さんに勝てる生物は地球上には存在しない。その上で、もし節足動物を人間大にするというチートも含めるなら、勝利の可能性があるのはモンハナシャコ、そして勝敗は一撃で決すると考えられる。

 しかしここまで書いてきてなんだが、できれば両さんの負ける姿は見たくないものだ。モンハナシャコの渾身のパンチを真正面から食らっても、いつものように「いててて、死ぬかと思ったぞ」なんて言ってピンピンしていてほしい。

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