■『黒子のバスケ』黄瀬涼太

 藤巻忠俊氏による『黒子のバスケ』(集英社)はキセキの世代と呼ばれる、個々の能力がずば抜けたバスケット選手たちの物語だ。それぞれが高い身体能力とオリジナルの技を身に付けているが、その中で黄瀬涼太はあらゆるプレイをコピーしてしまう「完全無欠の模倣(パーフェクトコピー)」という能力を持っていた。

 一般のプレーヤーはもちろんのこと、キセキの世代の能力までもコピーしてしまう。あまりにもチート的な、誰も勝つことができそうにない能力だが、彼がコピーできるのはワンプレーのみで、持続してコピーできるわけではないのが弱点。そして身長や身体能力までがコピーできるわけではなく、実際のプレイヤーとは異なる部分もあるのだ。

 バスケットは第4クオーターで構成され、試合終了まで40分もある。体力的にもコピーし続けることはまず無理だろう。もしそれが可能であればバスケ漫画の常識を覆す究極のオールラウンダーキャラの完成だっただろう。

 この能力の裏には黄瀬の努力もあった。キセキの世代の技をコピーする際には、自分に足りないところを別の方法で補うことで、本家に近い形で再現していたのだ。そんなオリジナルのアレンジが加わったことで、幅広くプレーができるようにもなった。黄瀬としては新たな発見に繋がったといえるだろう。

■『北斗の拳』ケンシロウ

 原作・武論尊氏、作画・原哲夫氏による『北斗の拳』(集英社)にも、北斗神拳の奥義「水影心」というコピー技がある。

 これは、一度戦った相手の技を己の中に落とし込むことで完全再現するというもので、ケンシロウがシュウとの戦いで、かつてユダが使用した南斗紅鶴拳奥義「伝衝裂波」を再現したことで初披露となった。その後ケンシロウは、サウザーとの戦いではシュウの「南斗白鷺拳」を使い胸に傷をつけ、そしてレイの「南斗水鳥拳」やラオウの「天将奔烈」までものにしてしまう。

 いずれも精度や威力は本家と比べても遜色ないもので、そのまま戦えてしまうレベルだったが、トキやラオウは水影心を使用しておらず、これは北斗神拳伝承者にのみ使える技と考えられる。実際『蒼天の拳』では北斗神拳伝承者である霞拳志郎も、戦った相手の技をすぐに自分のものにして使用していた。ここから見ても北斗神拳伝承者は、戦えば戦うほど強くなる最強の使い手といえるだろう。

 相手の技をコピーする能力者は数多く存在するが、完全再現という点ではなかなか難しいところもあるように思える。チート級の「コピー能力」を前に、どう攻略するかを読みながら考えるのも漫画の楽しみのひとつだろう。

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