緊迫した戦争の様子が描かれる『機動戦士ガンダム』においても、視聴者をほっこりさせる珠玉の名エピソードがあるのをご存じだろうか。敵側の立場にありながらも、その人間臭さで一部のファンに愛される2名のジオン兵士。
今回はそんな2名が登場したエピソードの“その後の生活”について推察したいと思う。本記事はあくまで筆者の希望を交えた、独自の推察であることをご了承いただきたい。
■「バムロ」避難民の母子に救助カプセル~人情味を添えて〜
まず紹介したいジオン兵士は、『機動戦士ガンダム』第8話「戦場は荒野」にて登場したバムロである。
グレート・キャニオンを通過したホワイトベースは、ガルマの率いる追尾部隊に地上と上空から挟みこまれ疲弊していた。セント・アンジェという町に近づいたころ、ホワイトベースに乗艦していた避難民の一部が地上に降りたいと願い出る。ブライトはそれを口実にジオン軍に休戦を申し出るのだが、これは避難民とともにガンダムを密かに地上に降ろすというブライトの巧妙な作戦だった。
避難民とガンダムを乗せたガンペリーがホワイトベースを出発すると、ジオン軍の偵察機がガンペリーの動向を監視しにやってくる。この偵察機に機長として乗っていたのがバムロである。
ガンペリー組は事前に開けておいた穴から煙を出し、やむを得ず不時着したように見せかけ避難民を脱出させる。セント・アンジェが亡き夫の故郷であるというペルシアは他の避難民たちと別れ、息子のコーリーと2人でセント・アンジェを目指し、荒野の険しい道のりを歩み始める。その様子を目撃していたバムロは、カイたちがホワイトベースに戻るのを確認したあと、「ちょっと寄り道をするぞ」と早々に引き返し、わざわざ親子のもとに物資が入った救助カプセルを届けるのだ。
地上に降りたガンダムを光の反射で見つけたバムロは、隠密作戦遂行のためにやむなく発砲したガンダムから狙撃されてしまい湖に落下、ペルシアの介抱を受けることになる。
遠くで勃発する連邦とジオンの戦火を見て「どちらが勝つか」と勝敗はさほど気にしていないそぶりを見せるバムロ。けがの手当てを受けた後はペルシアに対し、カプセルの中で休むことを勧め、コーリーには「坊主、強い男になって母さんを守ってやれよ」と言って隊へと戻っていった。
民間人とはいえ、立場上敵対する勢力の人間に対して見せたその温かな心意気が視聴者の心に響き、『ガンダム』のキャラの中でも密かな人気を集めるバムロ。その後の行方は不明だが、「原隊へ戻らなければなりません」という発言から、再びガルマの部隊に戻ったと考えるのが自然だろう。
またバムロは偵察機の機長を務めていたため、空挺部隊に戻った可能性が高い。となるとその後の動向として考えられるのは、第9話「翔べ! ガンダム」にて繰り広げられる連邦軍との激しい空中戦闘に参加している可能性が高いのではないだろうか。もしくは補給部隊所属であることも考えられるため、戦火の中心に身を置くことなく、戦争終結まで生き延びた可能性も捨てがたい。
戦争という緊迫した情勢の中、本来の自分を見失うことなく人への思いやりを持ち続けた心優しい男・バムロ。一年戦争を無事に生き延びて家族とともに穏やかな暮らしをしたことを、心から願うばかりだ。