■「クワラン」仕掛けた爆弾を処理したアムロに声援
続いて紹介するのは、第14話「時間よ、とまれ」にて登場したクワランだ。
ジオン軍のパトロール部隊に所属するクワランとその仲間たち。連邦のMSを倒し手柄を立てることで、早々に母国へ帰還しようと巧妙な作戦を練っていた。
おびき出されたガンダムに小型の乗り物・ワッパで接近したクワランたちは、ガンダムの周囲をまるでハエのように飛び回り、次々と時限爆弾を仕掛けていく。ガンダムのシールドを破壊するほどの威力を持つ爆弾が仕掛けられたことを知ったアムロは、ホワイトベースに帰投し爆弾の解除作業に取り掛かる。
爆破の時間までおよそ30分。他の人間を巻き込むまいとアムロ一人で爆弾を解除し始めたその様子を、クワランたちは遠方から双眼鏡で観察していたのだ。アムロが2つ目の爆弾を解除したころ、クワランは「やるねえ、連邦のパイロットもよ」と感心する様子を見せる。
残る一つがガンダムの腕の下に取り付けられていることに気づいたアムロとホワイトベースの面々は、総動員で解除作業に取り掛かる。残り1分20秒というギリギリの時間を見たクワランも汗を流し「1分20秒、間に合わねえのか……!?」とどこか心配そうにその様子を見守るのだ。
見事すべての爆弾を処理した様子を見届けたクワランたちは、軍服を脱ぎ地元の青年団を装ってアムロのもとにやってくる。アムロの勇敢な行動を直接称えたクワランたちは「これからも頑張れよ、大将!」と笑顔で言い残し、その場を去ってゆくのだ。
人間味に溢れ、どこか憎めない性格のクワランにもコアなファンが多い。その後のクワランたちの動向は不明だが、偵察が主な任務のクワランたちもまた、モビルスーツに乗り戦場の第一線に立っていたとは考えにくい。このアムロたちとの一件を踏まえ、より巧妙な作戦をもってどこかしらの部隊に奇襲を仕掛けていたのではないだろうか。しかし楽観的なクワランたちのことだ、思うような戦火も出せないまま時だけが過ぎ、一年戦争終結まで細々と任務を続けていた可能性は高い。戦後は軍を除隊し、仲間たちとともに本国で気楽な生活を送った、というストーリーが彼ららしいのではないだろうか。
戦争という極限の状況下において決して自分を見失うことなく、人間が持つ温かさを視聴者に届けてくれたバムロとクワラン。現実は厳しいのは重々承知だが、彼らのように人々を笑顔にできる心の優しい人間が、戦場から離れて気ままに暮らしている姿を想像するくらいは許していただきたい。