■戦いを始めるのも収めるのも人の想い「アクシズショック」
最後に紹介するのはシャアとアムロの戦いに決着がついた直後、落下する小惑星アクシズを敵味方関係なく押し返そうとするシーンだ。
すでに地球への降下軌道に乗ったアクシズ。シャアはアムロにコックピットごと捕獲されるが、目的は達したために、これまで必死に戦ったアムロをあざ笑う。しかしアムロはアクシズの落下阻止を諦めず、全長約23mのνガンダム単機で数万倍の質量を持つアクシズを押し消そうとする。この時、アムロはアクシズのことを「石ころ」と呼び、自身の無茶な行動に恐れなど微塵も感じさせない強気な言い回しをしている。
しかしアクシズは止まる様子もなく落下を続けるのだが、そこへ突然、地球連邦軍のモビルスーツがアムロの周囲で同様にアクシズを押し始めるのだ。やがてその行動を見ていたネオ・ジオン軍のギラ・ドーガたちも集まり始め、アムロの周囲には敵味方関係なくアクシズを押し返そうとするモビルスーツで溢れかえる。シャアはアクシズの落下を阻止しろなどといった命令は下していないため、ネオ・ジオン兵たちのこの行動は完全に個人の意思であることが見て取れる。
長く争い続けてきたアースノイドとスペースノイドが初めて手を取り合い、1つの目的を達成するために命を懸けるこのシーンは、混沌とした現代社会だからこそより胸に響く、涙なしには見られないシーンだ。
宇宙世紀シリーズにおいて重大な分岐点となる『逆襲のシャア』。幼少のころは主人公であるアムロをただ応援するだけだったが、大人になって改めて見ると、シャアの理屈も単純には否定し難いものであることに気づく。多くの命が犠牲になるのは仕方がないという思想には賛同しかねるが、どのキャラも世界の平和のために行動していることを踏まえて視聴すると、あらゆるシーンで思わず涙腺が緩んでしまうのは、年齢のせいだろうか。