■油まみれの柱を登る!?『ジョジョの奇妙な冒険』“地獄昇柱”
最後に紹介するのは、荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』の第2部にて、ジョセフとシーザーがリサリサのもとで修行した場面である。
このエピソードでリサリサがふたりに命じたのが、“地獄昇柱(ヘルクライム・ピラー)”。ヌルヌルすべる巨大な石柱を素手で登っていくというもので、波紋を極めていなければまず達成不可能な試練である。
「おれの嫌いな言葉は一番が『努力』で二番目が『ガンバル』なんだぜーッ」と豪語するジョセフは、いきなり自分の服で作ったロープを使用するという不正を働く。……しかし当然のごとくリサリサにロープを切られてしまい、計画は台無しに。このときジョセフはリサリサが自分に向けた目を“養豚場のブタでもみるかのように冷たい目”と称しているのだが、これに続く表現もキレッキレで面白い。
努力が嫌いとはいえさすがにブタ扱いは嫌だったのか、ジョセフはその後も必死で食らいつきコツを掴んでいった。しかしその先にもさらなる難関が待ち受けており、とにかく手に汗握る展開が続いていくのだが……。
文字にすればただ“柱を素手で登るだけ”という地味さだが、画的にインパクトがあり見ごたえたっぷりの修行シーンだ。
少年漫画に登場するトンデモ修行の数々。子どものころ、主人公たちに憧れて真似しようとしてみた経験がある方もいるのではないだろうか。
迫力たっぷりのアクションシーンも心揺さぶられるドラマパートも素晴らしいが、修行パートでしか味わえない魅力もたしかに存在すると思うのである。