ノスタルジーという言葉がある。“過ぎ去った時を懐かしむ”という意味だが、街中を歩いていても妙に昭和の風景が恋しいときがあるものだ。先日、子どもたちが散髪に行きたいと言ってきたので、車を出して理容室へ行き、カフェで軽食を取ることにした。そんな筆者は少年期に昭和時代を過ごしたが、今でもふと蘇るのが喫茶店や床屋での懐かしい思い出だ。そんな少年時代を振り返り、子どもたちにも聞かせてあげようと思う。
■床屋は髪を切るだけじゃない! 無料でもらえたマルカワのちょっといびつなフーセンガム
筆者が小学生時代のころ、床屋(理容とは言わないぞ)へ散髪しに行くと、毎回もらえたのがマルカワの「マーブルガム」だ。正方形の箱にいびつなボール形状のガムが4つ入っており、当時はオレンジとグレープが主流だったような気がする。
筆者は駅前商店街にある床屋に行っていたのだが、そこでは会計が先だったので番号札と同時にチビッ子はガムをもらえる仕様だった。
今では考えられないかもしれないが、小学1年生のころから親にお金をもらって自転車で一人、散髪に行っていた。順番を待っている間にガムを少し食べておくのが楽しみで、ちょっと厳しい店員さんが担当になると「ガムを出しな」とティッシュを渡されたものだ。
親と一緒ではないからか、待合で横で座っている若いお兄さんから自前で購入したロッテの「コーヒーガム」をもらったりしたな。今の時代だとNGだろうが……当時はコンビニなどもそう近くにないので、小学生がガムを簡単に買えるものではない(そもそも、親からは床屋代しかもらえていない)。しかもコーヒーガム! なんて大人な味わいなんだと感動していたものだ。
ちなみにマルカワのマーブルガムは、目の大きい黒猫が書いている「フィリックスフーセンガム」のときもあった。今もたまにコンビニの駄菓子コーナーで見かけるが、中には“あたり”か“はずれ”かが書いた紙が入っていたので一喜一憂したものだったな。
■いろんな漫画や雑誌が置いてあって時間を忘れるほど楽しかった床屋と喫茶店
さて、床屋はガムだけがメインではない(いや散髪だろ……)。漫画や雑誌、スポーツ誌も読めるので楽しかったものだ。
床屋以外でいうと、喫茶店にも漫画や雑誌がたくさん置いてあった。野球大好き少年だった筆者は、親に連れて行ってもらった近所の喫茶店で、ちばあきお氏の『キャプテン』を読みふけったものだった。
今と違って情報が少なかったこともあり、当時はそういった大人が行き交う場所でしか読めない漫画も多くあった。床屋は順番待ちの時しか読めないので、わざと土日の混んでいる時間に行っていたな。
行きつけの床屋には車やバイクものの漫画が多くあって、楠みちはる氏の『あいつとララバイ』や池沢さとし氏の『サーキットの狼』、しげの秀一氏の『バリバリ伝説』などが置いてあったのを覚えている。今、思うと渋いな……だが、少年時代の筆者にはとても刺激的で時間を忘れるくらい没頭した。
そういえば隣に座ったオジさんが『週刊実話』を読んでいるときだけは、漫画を読むフリをして目だけを限界まで横に広げていたな……いやオジさん、ページをめくるのが早いって!