荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』では、主人公のジョナサン・ジョースターのほかに、もう一人の主役ともいうべき悪役が存在する。それが、言わずとしれたディオ・ブランドーだ。ディオはその後、絶対的な“悪役”として作中で何度も登場するのだが、やはり印象深いのは第一部だったといえるだろう。
そこで、ジョジョ第一部に登場したディオの鬼畜な悪行三昧を振り返ってみよう。
■生みの親と養父を毒殺しようと企む
まずは、ディオは13歳かそこらで、母親に苦労をかけて死なせたどうしようもない実父を毒殺している。しかも自分に疑いがかからないよう、少量の毒を持って弱らせていった。ただ、母親に愛情を持っている節は見られるし、なにより悲惨な幼少期を過ごしているので、最初は少しは同情できたものだった。
実父の死後、ディオはかつて実父と縁があった貴族で資産家のジョージ・ジョースター卿のもとへ行って養子となるのだが、ジョースター家の財産をすべて乗っ取ろうと企む。ただ、真の後継者であるジョージの息子・ジョナサンが邪魔なため、とにかく卑劣な罠を用いて彼を追い込んでいくのだ。
ディオはパッと見は好青年で、勉強やスポーツなどなんでもできる優等生。ジョナサンとのケンカでその爆発力を脅威と感じたディオは、いったんは彼を陥れるのをやめ、財産の権利を得るために大人しく成長していく。
ジョナサンとは表面上の友情を演出し、その裏ではジョースター家の財産を諦めていないディオ。やがて彼は、養父となったジョージに実父と同じように少しずつ毒を飲ませて弱らせていくという卑劣な手段に出る。
病死と見せかけるように少しずつ毒を盛るという発想自体が鬼畜だったな……。しかし、それをジョナサンに見破られ、そこからジョージにもその企みを知られてしまい、さらに警察に包囲されたことで手詰まりとなってしまうディオ。そして、彼が選択したのは“人間として生きる”のを諦めることだった。
最終的にジョナサンを刺殺しようとしてかばったジョージを殺害し、その返り血と石仮面をかぶったことから驚異的な吸血鬼と生まれ変わったディオ。いやいや、腐り切った実父はともかく、財産のためとはいえ、お世話になった養父まで殺そうとするのか……? 半分もらえるのだから満足したらよかったのにな。まあ、それだとディオではないのだろうが……。
■ジョナサンを孤立させるためにエリナの唇と愛犬ダニーの命を奪う
さて、次は筆者も衝撃を受けたエリナ・ペンドルトンとジョナサンの愛犬ダニーについてだ。
ジョナサンと惹かれ合うようになったエリナだったが、ディオはジョナサンに屈辱を与えるべく、無理にエリナのファーストキスを奪う。いや、本当に最低なのだが、ディオの取り巻きらは「そこにシビれる! あこがれるゥ!」と大興奮。
しかし、英国淑女のエリナも負けていない。すかさず泥水で口を洗い、ディオの存在を全否定するのだ。これにプライドが傷つけられたディオはエリナを殴ってしまうのだが、その瞬間にもエリナはディオを睨みつける。恐らくここまでディオにやり返したのは、エリナが初めてだろう。
まあ、ジョナサンを陥れるためとはいえ一方的に女性の唇を奪うなんて、今の時代でも人として最低といえるだろうな。
そして、ジョナサンはその事実を知ってしまい、怒り狂ってディオを殴り倒す。いつもはマウントを取るディオだったが、ジョナサンの爆発力の前に成す術もなく殴られ続けてしまった。
しかし、ただでは引き下がらないのがディオだ。殴られた腹いせとばかりにジョナサンの愛犬ダニーの口を針金で縛り、焼却炉に入れて生きたまま焼き殺してしまう。
もはや人としておかしい……。しかも「自分の欠点は怒りっぽいところだ。反省しなくては!」と心で唸っている。
いや、反省するところはそこではない! もとはお前が先に悪いことをしたのだろう……。スピードワゴンの言った“生まれついての悪”の言葉通り、コイツは改心できない正真正銘の悪役だったぞ。