■命をかけたスパルタ指導!『エースをねらえ!』宗方仁

 山本鈴美香氏による『エースをねらえ!』は、“テニス”を題材にした作品だ。テニスブームを巻き起こし、社会現象ともなった本作。こちらも「少女漫画」というジャンルの名作になる。

 第一部で主人公・岡ひろみの才能を見出すのが、コーチの宗方仁だ。彼はひろみの才能に注目し、特別に入れ込んで猛特訓をしていくのだが、その結果、ひろみはチームメイトからいじめられてしまうなど、つらい境遇に置かれてしまう。

 しかし、宗方がそうまでしてひろみへ入れ込んだのは、余命3年と宣告された自身の後継者を育てたいという切実な願いがあったからであった。ひろみを立派な選手に育て上げることに焦って厳しすぎる指導を行うことになった結果、宗方は“スパルタコーチ”として世に認識されることになったのであろう。

 ひろみにとって宗方はつらい思いばかりをさせる人物ではあったかもしれないが、その反面、自分を誰よりも愛情をかけて見てくれる相手でもあった。彼の命をかけた愛のある“しごき”は、ただのスパルタではなく鬼気迫る緊張感があり、ファンは固唾を呑んで2人の行く末を見守ったものだ。

■天才バレリーノの強烈な“しごき”『アラベスク』ユーリ・ミロノフ

 “バレエ”という優雅な印象が強いテーマで、“スポ根”を見せたのが山岸凉子氏の『アラベスク』だ。

 優秀な姉へ劣等感を抱きコンプレックスを感じていた少女・ノンナ・ペトロワ。本作は、彼女が天才バレリーノとして名を馳せるユーリ・ミロノフに才能を見出されたことで、大きく成長していく物語になっている。

 ソビエトの「金の星」とも評されるユーリは、「わたしのレッスンはスパルタ式だ」と“スパルタ指導”を宣言。「石にかじりついてでも わたしについてくるんだ」という彼のレッスンは宣言どおり厳しく、あまりのスパルタ指導にノンナは逃げ出してしまうほどだった。

 彼女はすこし打たれ弱い一面があり、ユーリの猛特訓に音を上げることもしばしば。しかしノンナはユーリのおかげでバレリーナとしての才能を開花させ、天才ソリストのユーリとパートナーを組めるほどに成長していくのだった。

 美しい作画で描かれる強烈なスパルタ描写の『アラベスク』は、“スポ根少女漫画”では忘れてはならない名作だろう。

 

 昭和時代によく見られた、落ちこぼれの主人公が熱血な“しごき”によって成長していくという物語。テンプレートともいえるお馴染みの展開ではあるのだが、やはり主人公が多くの人々から賞賛され評価されていく様子には勇気づけられる。

 そしてそんな見応えのある名作たちが、令和の今でも人気を博しているのにもうなずける。今では考えられない厳しすぎる“しごき”ではあるものの、そのどれもが“愛のある”指導であったことも、作品が人気であるゆえんではないかと筆者は思った次第だ。

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