昭和時代に人気を博した少女漫画には、ときに目を疑うような熱すぎる“スポ根”シーンが描かれている。先生から生徒への度が過ぎた“しごき”は、昭和時代ならではの描写ではないだろうか。令和の今では考えられない熱すぎる“しごき”の数々……。犯罪スレスレの先生たちの“スポ根”魂を、今回は昭和時代の名作からご紹介しよう。
■強烈ビンタや冷凍室に閉じ込める!?『ガラスの仮面』月影千草
昭和時代に人気を博し、今でも根強いファンがいる美内すずえ氏の『ガラスの仮面』。“演劇”をテーマにした作品において、本作の右に出るものはないだろう。一見、平凡に見える少女・北島マヤと、彼女の才能を見出し大女優へ育て上げようとする月影千草の物語となっている。
本作に登場する月影は、“やばい先生”としても有名だ。強烈なビンタや、容赦のないボディーブローに留まらず、ついにはあわや監禁とも取れる“しごき”を披露している。その狂気じみた表情や行動は、たびたび話題となるほどだ。
たとえば「ふたりの王女」という演目を演じることになった、マヤとライバルの姫川亜弓。華やかで天使のような王女アルディスをマヤが、牢獄に閉じ込められて育ち、暗い復讐心を燃やす王女オリゲルドを亜弓が演じることに。普段のイメージとはかけ離れた配役のため、2人は役をうまく昇華できておらず掴みあぐねていた。
そこで月影が行った“しごき”が、マイナス20度を超える精肉店の冷凍室へ2人を閉じ込めるというものだった。これは彼女たちが演じるオリゲルドとアルディスが生まれ育ったという北欧の小国・ラストニアの“寒さ”を体感させるという目的があった。
それにしても、マイナス20度という寒さは、普通に考えても生命維持に危険が及ぶものだ。その状況でも月影は容赦なく演技指導を続行し、結果的に彼女たちは一皮むけることができたのだから、良くも悪くもあらためて月影のすごさを感じるエピソードでもある。
ただ、忘れてはならないのが本作が「少女漫画」であるということ。屈強な男性であっても堪えられなさそうな熱すぎる“しごき”を華奢な少女たちが耐え抜くのだから、『ガラスの仮面』はある意味“スポ根”作品だと筆者は思う。
2023年で連載開始から48年目を迎える本作。美内氏は「必ず最終巻まで描き続けます」との言葉を自身の公式ツイッターで明言している。最終回が近いとも噂される本作の今後も楽しみにしたい。
■硬いバレーボールを顔面に…!?『アタックNo.1』本郷コーチ
“バレーボール”をテーマにした浦野千賀子氏の『アタックNo.1』はどうだろう。大杉久美子が歌い上げる主題歌「アタックNo.1」は、作品を知らない世代でもわかるほど有名だろう。
本作は、病弱だった少女・鮎原こずえが不良グループを率いて世界を目指していく物語。スポーツを題材にした作品であることから、作中では“スポ根”描写が多く登場している。
こずえが所属するチームのコーチは元野球部のスポーツマン・本郷俊介だ。“なによりも愛情が必要”というモットーの本郷は、こずえをはじめチームのメンバーに寄り添う気遣いも多く、厳しい指導者ではあるものの生徒からも信頼されている先生だ。
しかし少々度が過ぎる“しごき”は、たびたび生徒からの反感を買っている。まだ幼さの残るこずえの顔面に、元野球部の強肩で放ったバレーボールを命中させるなど、熱血指導を行う本郷。彼の熱すぎる“しごき”によって、“涙が出ちゃう”のは当然だろう……。
本作は「少女漫画」であることを忘れてしまいそうになるほど、スポーツに熱い“スポ根”漫画として、今後も語り継がれる昭和の名作ではないだろうか。