■当時のファンを今なお魅了し続ける「声優アーティスト」…太田貴子

 1983年7月から放送されたテレビアニメ『魔法の天使クリィミーマミ』は、主人公・森沢優が魔法のステッキで人気アイドル・クリィミーマミに変身して活躍する物語。

 視聴者は10歳の優が16歳の色っぽいマミへと変身した姿にドキドキしたし、正体がバレそうな場面ではハラハラした。そんな1人2役の声優を担当したのが、当時15歳のアイドル歌手・太田貴子だった。

 太田は人気オーディション番組『スター誕生』をきっかけに、レコード会社『徳間ジャパン』に所属。徳間ジャパンはアニメ雑誌『アニメージュ』などを発行する徳間書店の関連会社で、こうした繋がりから太田は『クリィミーマミ』のオーデションを受け、見事に主演とその歌唱を射止めたのだ。

 アニメ主題歌「デリケートに好きして」は太田のデビュー曲となり、作中でもマミの持ち歌としてたびたび登場。後に篠原ともえや丹下桜など多くのアーティストによるカバーの他、ロックバンド氣志團の「デリケートにキスして」のタイトルにも引用されるほど知名度の高い楽曲だ。

 声優は未経験の太田だが、スタジオ見学で偶然『まんが日本昔ばなし』の録音を見た際に感動して鳥肌が立ったという。それからは本作の音響監督とマンツーマンで声優の勉強をし、それも楽しかったと語っている。筆者にとって本作の思い出といえば、優とマミの少し鼻にかかった独特な歌い方や話し方だ。少し甘えた雰囲気の、思わずマネをしたくなるほど魅力的な声であった。

 2023年に放送40周年を迎えた『クリィミーマミ』だが、今も太田はさまざまな場所で主題歌を熱唱している。そんな太田は10代の頃はアイドルらしさとマミを意識してかわいく、そして20代では大人っぽく歌っていたが、今は丁寧さを大事にしているそうだ。当時、テレビのブラウン管に映るアイドル・マミが輝いて見えたのは、アーティスト太田貴子が心を込めて声と歌声を届けてくれたからに他ならないだろう。

 最近は声優がアイドルとして人気を博しているが、飯島・太田の両氏は自身の代表作にもなったミンメイとマミ以外でメインとなるような役は受けず、以降は歌手としての活動を続けている。40年経ってもキャラたちの魅力が色褪せないのは、そんな二人の輝きを受け続けているためかもしれない。

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