80年代アニメファンを魅了した「ミンメイとマミ」主題歌歌唱でアイドル歌手になった「飯島真理と太田貴子」を振り返るの画像
『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』
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 昨年夏から公開され、大ヒットを記録した映画『ONE PIECE FILM RED』でAdoが歌唱を担当する世界の歌姫「ウタ」。2月1日には、彼女の歌う「新時代」がストリーミングの累計再生回数3億回を突破したことが発表された。また最近では『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場するロックバンド「結束バンド」が人気を集め、2月22日公開のダウンロードアルバムチャートでアルバム「結束バンド」が6度目の首位を獲得したこともアニメファンの間で話題となっている(ともにBillboard JAPANチャート)。 

 このように、アニメにおいてとても重要な役割を占める「歌」の存在。今回は時代を少し遡り、1982年と1983年という同時期に一大ブームを起こし、現代のアニメ作品にも大きな影響を与えた、「ミンメイ」と「マミ」それぞれの歌唱と声を担当した「飯島真理」「太田貴子」両氏を振り返ってみたいと思う。

■ミンメイとの同一視に困惑するも後に受け入れた…飯島真理

 1982年10月より放送されたテレビアニメ『超時空要塞マクロス』は、『機動戦士ガンダム』を代表とする80年代のロボットアニメ人気をけん引し、後に続くマクロスシリーズ三大要素「歌、三角関係、可変戦闘機」を確立させた作品だ。

 主人公・一条輝の声を当時17歳だった長谷有洋、アイドル歌手リン・ミンメイを19歳の飯島真理が担当。ふたりにとって声優初挑戦作であり、特に飯島は歌手としてデビュー前に受けた声優オーディションで「歌えるから」という理由でこの役に抜擢された。

 テレビ主題歌こそ『無敵鋼人ダイターン3』で知られる藤原誠氏が担当するが、ミンメイの歌唱のみならず振付にも飯島真理が関わっている。筆者もアニメ雑誌に掲載されていたミンメイと飯島による「私の彼はパイロット」の振付を見ながら、友人と一緒に「キューンキュン」と踊っていた記憶がある。他にも「小白竜」「シルバームーン・レッドムーン」など1分程度の曲や、27話の戦闘シーンを盛り上げた「愛は流れる」など劇中歌として発表。

 1984年に公開された劇場アニメ『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』で流されたミンメイの代表曲「愛・おぼえていますか」は、飯島の透明感あるのびやかな歌声がファンのみならず多くの人々を魅了した。こうして歌手・飯島真理は、そのまま『マクロス』の歌姫・ミンメイとして多くの歌番組やイベントなどへ登場するようになった。

 当時は声優人気が盛り上がりを見せ始めたころで、飯島はまさしく「アイドル声優」のはしり的存在だった。だが、周囲からミンメイと自分が同一視されることに戸惑っていたということが彼女のインタビューでは語られており、意識的にマクロスから距離を置くようになったそう。

 ところが飯島が移住先の米国で現地のファンからマクロス人気を聞き、再びマクロス関連の企画などにも参加するように。2006年に30周年記念DVD『Super Dimension Fortress MACROSS』を米国で発売した際には、現地在住歴の長い飯島が「英語版吹き替え」で22年ぶりにミンメイを担当。録音スタジオでミンメイのポスターと対面した飯島は、「あなたのことは、私が一生面倒見るからね」と心の中でつぶやいたことを誌上で語っている。

 飯島は現在ロサンゼルスで暮らしながら音楽活動を続け、2022年に40周年を迎えた同作イベントへの参加表明にはミンメイの台詞「私、歌うわ、思いっきり!」を添えていた。ミンメイに歌と声を与えた飯島真理だが、ミンメイもまた彼女にさまざまな経験を与えていたのかもしれない。

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