近年は、人気漫画を原作にしたドラマ化や映画化などの実写映像作品がヒットすることが多い。興行収入的に大成功を収めた漫画原作の実写映画には『るろうに剣心』や『銀魂』、『キングダム』などが挙げられる。また、テレビドラマでも『岸辺露伴は動かない』『孤独のグルメ』のように、漫画原作の作品が好評を博してシリーズ化するケースが増えている。2月15日には、車田正美氏による漫画『聖闘士星矢』のハリウッド映画『聖闘士星矢 The Beginning』(4月28日公開)の最新映像が公開となったが、映像では新田真剣佑が演じる星矢の戦う様子や、鷲星座(イーグル)の魔鈴と思われるキャラの姿が映っており、これまでの漫画やアニメとはまた違った世界観の『聖闘士星矢』になるのではと、ファンの間で話題となっている。
しかし、漫画原作の実写化作品はもちろんそんな成功例ばかりではない。原作のストーリーやキャラクターに思い入れのあるファンと、実際に出来上がった映像との間のギャップが思うように埋められず、多くの人が首をひねってしまったような作品も数多い。
今回は、実写化によってキャラクターが原作漫画とはまるで別人のように変わってしまった作品を、そのキャラクターと共に紹介していきたい。
■北斗百裂拳も迫力不足が否めなかったケンシロウ
まずは、原作・武論尊氏、作画・原哲夫氏による『北斗の拳』のケンシロウだ。原作の連載期間中であった1984年と1987年の二度にわたってテレビアニメ化されているほかOVAシリーズなどもある『北斗の拳』だが、実写映画も制作されている。東映ビデオと東北新社の共同製作によってハリウッドで制作、1995年に公開されている。
ストーリーは原作初期のケンシロウとシンの戦いがメインとなり、リンやバットも登場しているが、キャスティングはユリア役の鷲尾いさ子以外は全て外国人の俳優で固められ、当然ながら劇中の台詞も英語。
シンや雑魚キャラは外国人俳優でもそれほど違和感がないが、ケンシロウだけはどうしても別人にしか思えない。起用された俳優はイギリス出身の元キックボクサー、ゲイリー・ダニエルズ。スマートでイケメンではあるのだが、いかんせんケンシロウの常人離れした筋肉の盛り上がりや、憂いをたたえた悲壮感など、原作のキャラクターが持つ特徴がうまく再現されているとは感じられないものだった。
格闘技経験者であるダニエルズが抜擢されたのは、北斗神拳の技をノースタントで再現できるという見込みもあったのだろう。しかし、実際に北斗百裂拳を使う場面では、アニメや漫画に比べるとどうしてもパンチが弱く見えてしまい、いまひとつその迫力が伝わってこない。経絡秘孔を突いたことで相手の頭が爆発する演出は特撮で再現されているが、これも予算の関係だったのか少しチープに見えてしまい、全体としてケンシロウや北斗神拳の凄みが失われてしまっていたのがなんとも残念だ。
ちなみに、ゲイリー・ダニエルズは、やはり実写版の『シティーハンター』(1993年/主演:ジャッキー・チェン)や『TEKKEN-鉄拳-』(2010年/主演:ジョン・フー)などにも出演しており、日本の作品とは関係が深い俳優。本人はこの映画を意外と気に入っているのか、自分の息子に「ケンシロウ」と名付けたというエピソードもある。
実は、2018年にはロート製薬の男性向け化粧品のCMとのコラボにより、伊藤英明がケンシロウ役を務めた実写CMもあって、こちらはなかなか再現度の高い出来となっている。今であれば、もっと原作のイメージに近い実写版の完成にも期待できそうだ。