■孫悟空がいじめられっ子の高校生!?

 次は鳥山明氏の大ヒット作『ドラゴンボール』の孫悟空。世界的にも有名かつ人気のある作品なだけに、実写版がハリウッドで制作されるというニュースには、日本のみならず世界中のファンが期待に胸を膨らませた。しかも監督は『ファイナル・デスティネーション』などで知られるジェームズ・ウォン、プロデューサーは香港映画界の超大物チャウ・シンチー。これで期待するなというほうが無理だろう。タイトルは『DRAGONBALL EVOLUTION』となり、2009年に公開された。

 メインとなるストーリーはピッコロ大魔王との戦いで、ドラゴンボールを7つ集めるという設定は同じである。しかし、大きく違うのがその他の世界観で、なんと悟空が学生として高校に通っているのだ。そのうえ、引っ込み思案でいじめられっ子というところも本来の悟空とはかけ離れていて驚かされる。そして祖父がピッコロ大魔王に殺され、ドラゴンボールを探す旅に出るという設定にもかなり無茶があり、ヤムチャやブルマなど原作ではお馴染みのキャラクターも登場はするのだが、その設定や性格は原作とはかなり異なっている。

 最後はピッコロ大魔王との一騎打ちで悟空がかめはめ波を放ち勝利となるが、かめはめ波の演出にも原作特有の手に汗握るような迫力はなく、これで本当に倒せるの? と不安になってしまうほどだ。ファンの期待も大きかっただけに、あまりに原作を軽視したとも言える改変だらけのハリウッド版『ドラゴンボール』は、結局は興行的にも大失敗となってしまったと言わざるを得ない。

 漫画を原作とした映画やドラマはこれまでにも多数あり、『ONE PIECE』『幽☆遊☆白書』『僕のヒーローアカデミア』といった超人気作の実写化制作が予定されている。もちろん原作に忠実であることが必ずしも作品のクオリティを左右するわけではないが、たとえばフランスで制作された『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(2019年)がそうであったように、原作に対するリスペクトが感じられる作品はそれだけでも観客を引きつけることができるのは確かだろう。

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