■歯に衣着せぬ爽快な名セリフ!『深夜のダメ恋図鑑』
痛快に女性のリアルを描いた尾崎衣良氏による『深夜のダメ恋図鑑』。2013年に『プチコミック増刊』(小学館)に掲載された本作は、2015年から『プチコミック』にて連載が開始された。
本作では3人の女性が、自身の“ダメ恋”エピソードを語るストーリーになっている。彼女たちの“ダメ恋”に登場する男性たちは、個性が強いキャラクターが多く、そんな彼らを主人公・古賀円、福間千代、千鳥佐和子の3人が歯に衣着せぬ物言いでズバズバと切っていく様子が見どころにもなっている。
作中でとくに印象深いのが、“難あり男子”の国分諒と付き合っていたキャリアウーマンの佐和子だ。佐和子は仕事も家事もそつなくこなす器用な女性。そんな彼女は、“尽くしすぎてしまう”という一面があり、彼女に惹かれて寄ってくる男性は“ダメ男”ばかりという不憫なキャラクターでもある。
コミックス2巻では、そんな“ダメ男”の諒にものを言う佐和子の姿が描かれていた。彼女の家に転がり込んでいる諒は、服を脱ぎっぱなしにしたりゴミを放置したりとやりたい放題。その都度少しずつ注意していた佐和子だが、それなのに諒が「自分ちだって言うなら オマエが片付けろよ」と、衝撃の発言をしているところを目撃してしまう。
その発言を受け「そうだよねー」と、同意する佐和子。彼女は「ゴミに気づいたら捨てるべきだよね」と笑みを浮かべ、「あたし気づいちゃった オマエが一番いらねぇわ」とズバリ。そして「あたしアンタのママじゃないから」と言い捨てるこのセリフ。言葉はきついかもしれないが、彼女の発言に同意する女性も多いのではないだろうか。
男性の“家事をしない問題”というのはいつの時代も付きもので、さまざまな理由があれど女性たちを悩ませているのも事実。佐和子の「アンタのママじゃない」というセリフは、同じ境遇にある女性にとって激しくうなずけるものだと思う。
女性たちが放つ「恋が冷めた瞬間」のセリフは、読者の心にグサリと刺さるものが多い。リアルな女性たちの心情を表現した言葉は、作者ならではの脚色が施され、どの作品も共感を得るシーンになっていた。
的確な表現やときに辛辣すぎる表現もあるが、女性向け漫画ならではのズバズバした爽快感は、読者の心を掴んでいるだろう。