1954年に創刊された『なかよし』(講談社)は、『ちゃお』(小学館)、『りぼん』(集英社)と並んで、小中学生向けの3大少女漫画雑誌のひとつと称されている。
同誌は刊行中の漫画雑誌としては日本最古の存在だが、1970年代後半の『キャンディ・キャンディ』などのヒットの後、1980年代後半からは刊行部数が低迷。この状況を打破し他誌との差別化を図るため、それまでの恋愛漫画路線からより低年齢層をターゲットとしたファンタジー路線に切り替えられたという経緯がある。
その結果生まれたのが、1992年に連載開始した武内直子氏による『美少女戦士セーラームーン』。中学2年生の月野うさぎが喋る黒ネコのルナと出会い、幻の銀水晶を探すためにセーラームーンに変身して悪と戦う物語だ。
恋愛要素も残しつつ、少女が変身して悪と戦うというバトルヒロインもののストーリーがテレビアニメとともに大ヒットし社会現象にまで発展。現在もその人気は衰えることなく、世界中に多くのファンを持っている。
さて、『なかよし』にはこの作品コンセプトのファンタジー路線の切り替えにより、『セーラームーン』以外にも多くのバトルヒロインものが生まれた。今回は、当時の少女たちの心を掴んだ、『なかよし』の名作バトルヒロイン漫画を振り返りたい。
まずは、1994年から1996年まで連載された、立川恵氏による『怪盗セイント・テール』。ミッションスクールに通っておりマジシャンの父を持つ羽丘芽美が、盗品を盗み返して悪人達の罪を暴くという義賊「怪盗セイント・テール」となって暗躍する物語だ。
変身時のセリフは「主よ、タネもしかけもないことをおゆるしください。ワンツースリー!」。また変身後にはセイント・テールの協力者で親友・深森聖良とともに「わたしたちに神のご加護がありますように」と祈るシーンも印象的だった。衣装は黒を基調としたマジシャンふうのもので、マジシャンとミッションスクールの要素を混ぜこんだ画期的なストーリーだった。