主人公やその仲間が強大な敵を倒すために過酷な修行を積んで、その末に新たな力に覚醒するというのは、少年漫画によく見られる王道展開。しかし、中には修行の有無に関わらず何らかの理由によって本来のポテンシャルを発揮することができないため、なかなか自分の壁を越えられないキャラクターもいる。今回は、そんな呪縛にとらわれながらも、自らの弱点を克服し「覚醒」を遂げたキャラクターを3人振り返りたい。
■兄の支配から抜け出し精神的にひと皮むけたキルア
まずは冨樫義博氏の漫画『HUNTER×HUNTER』のキルアだ。作中のキルアは、序盤からそのポテンシャルを高く評価されていて、実際にゴンと比較しても、その身体能力・念能力ともにわずかに上回っている。だがビスケからは、勝てる可能性があっても格上の相手に相対する途端、逃げる前提で立ち回る癖があると指摘される。読み返してみると確かに作中でもその通りに描かれていて、ノブナガに監禁された場面でも、ビノールトとの修行でも、常に立ち向かっていくゴンとは対照的だった。
そんなキルアの悪癖が解消されたのは、モズとウサギのキメラ=アントであるラモット戦のことだ。
立ち向かおうにも兄・イルミの言いつけが脳裏に浮かび、思うように体が動かないキルアは、一方的にラモットの攻撃を受けてしまう。そしてトドメの一撃を受ける土壇場で、キルアは額に手を突っ込み、イルミが埋め込んだ針をえぐりだしたのだ。
恐らく、イルミが念を込めて埋め込んだ針をギリギリで感じ取ったのだろう。針を取り除いたキルアはラモットを瞬殺。これ以降は、対キメラ=アントの最前線で大活躍した。
針を取り除いたことで能力が向上したわけではなく、それによって呪縛から解放されメンタル的な部分での変化が立ち回りに大きく影響を与えたのだ。とはいえ、それだけであそこまで強くなるとは、もともと備わっていたキルアのポテンシャルはやはり計り知れないものがあると言えるだろう。