1983年頃からおよそ13年ほどが「ジャンプ黄金時代」と称され、誌上には『北斗の拳』『ジョジョの奇妙な冒険』『ドラゴンボール』『SLAM DUNK』など多くの人気漫画が掲載されていた。
ここ最近のアニメでは、かつてのヒット作品のリバイバルがブームとなっており、2020年10月から2年間に渡って『DRAGON QUEST-ダイの大冒険-』が再アニメ化され話題に。また2022年12月に新作映画『THE FIRST SLAM DUNK』が公開されると、国内だけでなくアジア各国で大ヒットを記録。また2023年にはフジテレビ系ノイタミナ枠でアニメ『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』の放送が決定しており、ジャンプ黄金時代の作品が再び注目を集めている。
誌面のどこを開いても名作ばかりだったあの頃。再びアニメ化をすることで男女双方から人気を集めるのではないかと思うのがギャグ漫画『奇面組』だ。新沢基栄氏のデビュー作でもある同作は、発表時期や掲載雑誌の違うシリーズがあるが、今回はジャンプ掲載の昭和版を振り返りたい。
1980年スタートの『3年奇面組』は主人公の中学時代が描かれ、連載途中の1982年から高校進学に伴い『ハイスクール!奇面組』に改題した珍しい漫画だ。なお1985年制作のテレビアニメでは駆け足ながら中学時代も放映されたが、タイトルは最初から『ハイスクール奇面組』のままだった。
今回は、80年代の『ジャンプ』を代表するギャグ漫画のひとつである『奇面組』について、いかに革新的なおもしろさや魅力が詰まっていたかに加え、同作を現代にアニメ化したらはたして人気が再燃するのかを考えてみたいと思う。
■ダジャレ名前とグループの特色をわかりやすくした「組」の存在
『奇面組』の特徴をあげるとしたら、まず思い浮かぶのは登場人物たちの「名前」だ。主人公・一堂零(いちどう れい)は朝礼などの「一同、礼」だし、友人の冷越豪(れいえつ ごう)は「レッツゴー」だ。他にも女優の薬師丸ひろ子をもじった「子役締ひろ」、「春曲鈍」はそのまま「ハルマゲドン」など、どのキャラも名前がダジャレだったりパロディネタなのがおもしろい。
また同作ではクラスとは違った5人組がいくつも存在し、それぞれがキャラ名に関連した特色を持っている。たとえばスポーツ万能の「腕組」メンバーは「雲童塊(うんどう かい)」をはじめとした運動関連の名前だし、女子にモテる「色男組」では「切出翔(きれいで しょう)」や当時人気の男性アイドルユニットを当て字にした「頼金鳥雄(たのきん とりお)」など、子どもだった筆者でも容易に元ネタに気づけた。
作中キャラは端役まで含めると200人を軽く越え、そのほぼ全員に名前やプロフィールがつけられている。つまり、本作はキャラが多くともダジャレで覚えやすく、さらに特色ある「組」分けがしてあり、今でいう「箱推し」しやすい作風であると筆者は感じた。
そんな本作に欠かせないのが、一堂零をリーダーに冷越豪、出瀬潔(しゅっせ きよし)、大間仁(だいま じん)、諸星大(ものほし だい)の5人で形成された「奇面組」だ。必殺技の「奇面フラッシュ」は喰らった相手を吹っ飛ばすほどの威力で、小学生当時に友だちと横一列に並んで「奇面フラーッシュ!」と叫んだ経験がある人もいるかもしれない。
彼らは周囲から一目置かれた変態揃いだが、他人との違いを魅力的に扱っていた。例えば男らしい豪のことを乙女な大は苦手にしていたが、互いの違いを個性として認め合うことで誰よりも仲良くなっている。こうした奇面組メンバーの在り方は現代の人にも刺さるところがあるのではないだろうか。